越境とか色々。
書きたい部分しか書いてませんが。
「―――…、…アンタは誰だ」
「……」
アカギの後ろに居た平山は、怪訝な顔をする。
誰、も何も。
見間違える筈もない。
圧倒的質量にまで膨れ上がった魔力。
他の魔物には見られない、すべてを焼き切るような烈しい光。
何よりも傲慢な猫科の動物そのもののつり上がった、赤い目。
「…ククク、くふふ、くぅふふ、くふ、……ふ…」
呪文を発動させる手は止めないままに、”鷲巣”は笑い出した。
やっと、ここまで追い詰めた。
最初は”鷲巣”を護り取り囲む白い獣たちをうんざりするほど打ち倒し、いざ”鷲巣”と戦闘が始まっても、眩い光のヴェールがすべての攻撃の効果を何割も削り取ってしまう。
その上、対魔物用に作られている防具や武器は光属性を想定しては作られてはおらず、光の属性を主属性とする唯一の「魔物」である鷲巣にはダメージを与え辛い。
だから、アカギの台詞はその意味でもおかしなものだった。
鷲巣以外に、光の属性を持った魔物など見たことがない。今まで。
「…くふふっ、ふふ…」
身を折って笑っていた”鷲巣”が、やっと顔を上げる。
「見破られてしまったねえ、アカギ君」
穏やかに、笑う。
今まで浮かべていた冷笑とはまったく違う種類の。
「お察しの通り、私は君の戦いたがっている鷲巣巌ではなく、別の人物だよ。…騙して御免ね?」
それこそ、いっそ可愛らしく
小首を傾げて謝る姿に、平山もカイジも毒気を抜かれて脱力しかける。
「アンタは何だ」
アカギだけは淡々と、眼前の老人へと問いかけた。
「…君たちを倒すようにと、あの方に無理難題を吹っ掛けられてねえ」
一変して人懐っこい態度を取る老人の背後に、二体の魔物が新たに現われた。
戦闘開始音楽
『魔獣フェンリルが現われた』『羅刹鬼が現われた』
『”鷲巣”の属性が変動する…』
「だから、ね。君たちに恨みは無いのだけれど…私に倒されてくれないかな?」
まるで親しい友人に願い事でもするような甘えた声の背後で、魔獣の咆哮が迸った。
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