眠くて挫けそうになっていたら、すばらしいあかわしを拝見したのでエネルギー充填!!
その結果がこれだよ!
……実にすみません。
童話でパロディ。赤ワシです。
「鏡よ鏡…」
真剣な瞳が鏡を見つめる。
それはもう、真剣な…
「……やっぱりアイツは危険過ぎる! お前もそう思うだろう!」
『は、はい…そうですね、その通りかと…』
お后の名を一条。鏡の名(?)を村上…。
むかしむかしあるところに、それはそれは特徴的なおひめさま(仮)がいました。
おひめさま(仮)は、雪のように(歯が)白く、血のように(覚醒時の)目が赤く、黒檀のように黒い髪の持ち主でした。
おひめさま(仮)は素晴らしく明瞭な頭脳とチートな豪運の持ち主で、拳でコンクリ…否、岩を一撃粉砕できる破壊力の持ち主でもありました。名をワシズイワオというおひめさま(仮)です。
そんなワシズを、後妻であるお后はとても恐れていました。
まあ目の前でヒグマを素手で倒されたら、普通は恐怖心を抱きます。
ワシズに負い目はまったくなかったのですけれど、ある日、お后はお抱えの猟師に森の中でワシズを始末してくるようにと言いつけました。
ワシズは、鍛錬なんだか散歩なんだか、毎日森に出掛けていきます。
そこに付き従うかたちで同行し、隙を見て撃ってしまえというわけです。
「何を惚けている。食わんのか」
「あ、いえはい、いただきますいただいてます」
焚き火を囲んでのお昼ご飯、猟師はお后の無茶振りに頭を悩ませていました。良心の呵責とか罪悪感とかそんな問題じゃない、もっと現実的な問題として、この人銃で撃ってほんとに死ぬの?という、その一点です。
お城で持たされたお弁当をもぐもぐしながら、隼はそっとワシズを窺いました。
「(勝てる気がしねえ)」
それはどうぶつてきなほんのうでした。
「…ワシズさま」
「なんだ」
「実は俺、お后さまに…」
「ああ。分かっとる」
事も無げにワシズは言って、咀嚼していたサンドイッチを飲み込みました。
「え?!」
「ワシを殺して埋めてこいとでも言ったんだろう」
躊躇いながら、隼はこくりと頷きます。
「器の無いことだ。…フン、城に未練などない。丁度良い機会じゃ、旅にでも出てみるか」
こくこくと激しく頷きます。
君子危うきに近寄らず。危険を冒さずに済むのなら、それに越した話はありません。
「よし、行くぞ隼!!」
「は… …・・・…ぇえ?! は、はい…」
え、あれ? なんで? 俺?!
疑問は、ワシズの嬉々と楽しそうなオーラにあっさりとかき消されるわけで。
その後は、七人の下僕と出会ったり、ワシズの生存を知ったお后に命を狙われたりしながらも、それなりに平和に時間は流れていきました。
けれど幸せな時間は長くは続かなかったのです…
「ワシズさまー! ワシズさま…!」
「………」
毒入り林檎を食べてしまったワシズは、覚めることの無い眠りについてしまったのです。
(象が即死するレベルの毒を仕込んだのに、倒れて眠ってるだけってなんだその化け物はっ…!! お后談)
七人の下僕は嘆き悲しみ、隼も棺に縋って泣きました。
「…城のお后がワシズさまを…」
「待って、ミギー(仮)ちょっと待てって、なにそれなんだよその手の中の猟銃は!!」
「仕留めてきます」
「こらー!! そんなことしたってワシズさまは目覚めねえだろ! 止めろよ~っ!!」
訂正、縋って泣いている暇はありませんでした。静かに殺意を滾らせる右腕くんを引き止めるのでいっぱいいっぱいです。
「おーおー、どうした? 随分騒がしいなあ?」
ひょこりと、煙草を咥えた中年(仮)が現われ、ワシズを納めたガラスの棺を覗き込みます。
虎柄シャツに白スーツ、白髪咥え煙草という、うさんくさいにも程がある中年は、しげしげと視線を送ります。
「この方は我々の大切な主です、不躾な真似はご遠慮下さい」
一応猟銃は置いておいて、右腕くんが慇懃に丁重に防御壁を張りました。けれど、気にしないのがこの中年、もとい、赤木しげるです。
「そりゃ悪かった。…眠ってるのか?」
「毒入り林檎を食べてから、ずっと目を覚まさないんです」
あの程度の毒で倒れるワシズさまじゃあない筈なのですがと、眼鏡の下僕が言いました。
「へえ」
中年が薄っすらと笑います。
嫌な予感がする。
右腕くんが警戒を深めるのと、中年が行動を起こしたのは殆ど同時でした。
「キュートな姫さんなのに、勿体無ぇな」
ちゅっ
マウストゥーマウス。所謂口付け。もしくは接吻。
した途端に、ふるふると、眠っているはずのワシズの瞼が震えだしました。
「げほっ!!」
ビスッ
「いてっ」
唐突に咳き込んだワシズの口から飛ばされた林檎の欠片が、赤木の額にヒット。
「げっほげほっ…!! ………あ゛?」
続いて咽たワシズでしたが、直ぐに自分の周囲の視線に気付いて、みんなを見回します。
「わっ」
「ワシズさま… ワシズさまぁああああ!!!!」
「ワシズさま!! 良かった、良かったですぅうう!」
奇跡的に目を覚ました主に、7人の下僕のうち6人が一斉にワシズにしがみつきました。1人だけ、少し離れてそれを見守っていたのですが、事態を理解したワシズに手招きされて、その輪の中へと加わりました。
「心配かけたようだな」
「…ご無事で何よりです」
右腕くんとワシズのやりとりに、6人はまた目に涙を浮かべました。
そうして暫く下僕に囲まれていたワシズですが、みなが落ち着いてきたのを見計らい、静観していた中年へと視線を投げ掛けます。
「で」
そうして、最もな疑問を。
「誰だ貴様」
「赤木しげる。博打打ちだ」
実に簡潔です。
「ワシに何をした」
ワザとらしく眉を上げた赤木は、返答の代わりに軽く唇を鳴らしました。口付けの時に立てる音です。
「フン」
それでワシズには伝わりました。棺から脱出すると赤木に接近し、じろじろと赤木を観察します。
「アンタの名前は、ワシズってのか」
「ワシズイワオだ」
観察されるがままに、赤木はにっこりと微笑みました。
「俺の后にならねえか?」
「断る」
秒 答。
「なら博打で俺が勝ったら、俺の后になれよ」
「よかろう」
秒 答。Part 2。
えーーーーー。
一同のツッコミを受け付けない変な人たちは、そのまま博打勝負へと突入しました。
なんの話って、むかしむかしのおはなしです。
そう、人によっては、これを白雪姫の物語と、いうかもしれませんけどね。
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