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いわゆる裏的な
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Posted by - 2024.11.01,Fri
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Posted by 瑞肴 - 2010.01.30,Sat


越境。
なんだかよくわからないけど、犬と猫の話。
越境ではありますが、ノーマルアカ鷲前提で。














鷲巣が、『犬を拾った』と言うので興味を引かれた。
動物をどうこうしようという心が鷲巣に存在していたのを、意外に思ったから。

「見たい」

極シンプルなアカギの言葉に、鷲巣は片眉を上げる。
アカギはアカギで、動物をどうこうしようという男ではないのを鷲巣巌は知っていた。

「見てどうする」
「…アンタは動物に興味がないと思ってた」

数秒沈黙の後、鷲巣の口端が僅かに上がる。

「餓鬼め。それ程気になるなら見せてやろう」

一見かみ合っていない会話はかみ合っている。

アカギは、鷲巣の『意外』を読み切れなかったのが不満なのだ。だから直接『意外』を確認しにいこうとしている。

理解したから、鷲巣は哂った。






鷲巣の邸には幾つも部屋がある。
何度か角を曲がり階段を上がり、案内された一室。白服が扉をノックすると、中から人間の声で返事がかえった。

「どうぞ」

白服は部屋には入らないようだ。
遠慮する理由もないアカギはドアノブを握り、扉を開くと部屋へ踏み込む。

簡素な部屋だった。
客室、よりは、使用人部屋のような。

「………」

アカギの視線が、これまた簡素な椅子に腰掛けていた男性へと注がれる。
男性は、驚いているようだった。
あからさまではないが気配が強張っている。
だが、質問が出来る立場ではないらしい、何かを聞きたそうにしているものの、口から問いが零れる気配はない。

「成る程、あんたが犬か」

よく調教されている。
自らの意思のみで動くことに制限を掛けた相手に、納得したアカギがひとりごちた。

確かに、そういう表現をするなら鷲巣は”犬”を好んでいるだろう。

「……」

怪訝と警戒と不快を乗せた視線。
別段焦らすつもりもないアカギは種明かしをした。

「鷲巣が、犬を拾ったっていうから見せて貰いに来た」

男の顔が僅かに歪む。
否、歪むというならば。
男の額には目を背けたくなるような酷い火傷の痕があり、顔中に転々とその火傷は散らばっていた。

「…犬、か」

自嘲か憤りか、そんなことはアカギには興味がない。

「君は、何だ?」

中々適切な問いだと思った。

「俺は」

この男や白服たちが犬だというなら。

「猫だよ、鷲巣の」

鷲巣は猫が嫌いだ。
勝手気儘に自己中心、何者の束縛も意に介さないものは、支配できないから。
だから鷲巣は猫が嫌いだ。鷲巣巌が猫だから。

男は今度こそ怪訝な顔をした。

そこで興味を失ったアカギは、男に背を向けると部屋を出て行ってしまう。

まるでわけのわからぬ来訪者に、部屋の中で男は苦く呟いた。

「なんなんだ、あの若造は…」





男の名は、利根川幸雄という。

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