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いわゆる裏的な
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Posted by - 2024.05.16,Thu
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Posted by 瑞肴 - 2009.10.03,Sat






仮にアップ。
内容はサイトの「Waltz」と全く同じです。

以下より。


















「結婚しよう、鷲巣巌」
「死ね、狂人」



アカギは首を傾げた。
自身、あまり文法の扱いに長けているわけではないが、鷲巣の返答は文法というかなんというか
色々な手順を超越した罵倒に聞こえたので。
しかし鷲巣はその返答で充分だと判断したのだろう、既にアカギの前から遠ざかっていた。
首を傾げた体勢のままのアカギが、鷲巣邸の長い廊下に取り残される。
「………」
当人が居ないのでは、お話にならない。
仕切り直しということで、アカギも何処かへと歩き出した。
それから、数時間が経過した、夜。
鷲巣の私室、そろそろ休むかと手にしていた本を膝に置いて軽く伸びをした所で、アカギがぬるりと侵入してきた。
「…ノックをしろと、何度言わせる」
「…ああ」
そういえばそうだったかと、アカギは僅かに視線を浮かせる。が、それだけだ。
これでは次もどうせノック無しに入ってくるだろう。鷲巣は憤慨に鼻を鳴らした。
「話がある」
「…あ?」
突然の申し出に鷲巣は眉間に皺を入れた。わざわざアカギが『会話をしよう』と振ってきたのは初めてだった。
アカギは通常時は口数が少ない。時々、何か妙なスイッチでも入ったのかと勘繰りたくなるほどに饒舌になる、以外は。
アカギの視線が、ベランダへの大きな窓へ投げられた。
「…なんじゃ」
恐らく『あそこへ出ろ』ということだろう。
言いたいことは伝わったが、察したからといって動いてやるのは気に食わない。
不機嫌そうに眉を顰める鷲巣に何を思ったのか、アカギは右手をスッと差し出した。
そうして、じぃっと見下ろしてくる。
「~~っ、違う!! エスコートしろという意味ではないわっ…!」
誰がそんなことを望んだと、膝に乗せていた本を持ち上げて乱暴にソファに叩きつける。
アカギの気遣いはいつもいつも斜め上か斜め下で、中間は無いのかと毎度怒鳴りつけたくなる。
ともあれアカギはなんだ違うのかというように手を引っ込め、不機嫌の矛先を捻じ曲げられてしまった鷲巣は渋々とソファから腰を上げた。
ベランダへ続く窓が開かれる。
どこかぬるい、それでいて冷たい、秋から冬にかけての独特な夜気が風となって頬を撫でた。
「アカギ?」
何がしたいのか、まだ判らない。
仕方が無いので、促されるままベランダへ。
濃い藍色の空。何処までも広がる藍の中に、ぽつりぽつりと星が瞬く。
美しいだとか綺麗だとかいう主観を殆ど喪失している鷲巣にとってさえ、この静謐は好ましいものに受け取れた。
「鷲巣」
数秒ではあるが空に意識を取られていると、アカギがいつの間にだか真横に陣取っていた。
「……?」
左手に、指を絡ませてくる。軽く握り締められて反射で振り払おうとするが、胸の高さまで持ち上げられて、
もう片方の手で手首をがしりと捕まえられてしまって手を動かせない。
「…!?」
何事。
これは、口付けられるパターンではないし、抱き締められるには妙な体勢。
『何が起こるか判らない』という状態をとにかく嫌う鷲巣にとって楽しい状況ではなかった。しかし、アカギはそ知らぬ顔で。
唇を、捉えた左手の、骨ばった薬指の付け根に落とす。
「なっ、なぁっ…」
眼前で、腰を折ったアカギの白い前髪がさらりと流れた。
薄暗い闇の中でぼんやりと淡く、星と室内の光を受けるそれは不思議な存在感。
触れていた唇の合間から、ぬるりと温かいものが薬指を舐めた。
「…ッ!!」
腰に軽くて重い痺れが走る。
軽く関節に歯を立ててから上目遣いに見上げそのまま視線を絡めてきた。
アカギの、あまり人間じみていない双眸に囚われる。
「アカ…ッ」
「…結婚しよう、鷲巣巌」
「…………」
フリーズ。
「…。聞こえなかったのか? 鷲巣巌。 結婚しよう」
「…~~~ッ!!」
アカギが鷲巣の左手を解放するのと、鷲巣の右手が正確にアカギの顎を狙って拳を繰り出したのはほぼ同時。
残念ながら拳は空を裂き、バランスを崩した鷲巣の腰を、長い腕が支えた。
「離せっ…!!」
暴れる。
真顔で何を言い出すかと思えばまたそれか。本っっ当にこの男だけは理解出来ない。
「シチュエーションを改めろなどと誰が言った…っ!! 馬鹿! 戯け! 馬鹿者…!!」
しかし理解出来ないというわりに、至極分かり辛いアカギの意思表示を正確に汲み取っている鷲巣巌(昭和の闇の帝王)(別名昭和のツンデレ)。
暴れる鷲巣をあっさりと御しながら己の両腕に納めつつあるアカギは、不思議そうに激昂しているらしい赤い顔を覗き込んだ。
「嫌なのか?」
「~~そういう意味ではなく…」
ぶちぶちぶちと、鷲巣の後頭部から細い血管の切れる音が聞こえた。ような気がした。
「いい加げっ
「鷲巣」
「ぁあっ?!」
アカギの手が、長い白髪を梳く。この男は造詣だけは、無駄に美しい。眉を思い切り顰めたままの鷲巣が見上げる。
「幸せにしてやる」
ぶつん。
今度は、確実に太いのが一本切れた。
アカギの笑顔が腹立たしい。
『可否を問い、否を示さなければ可なのだろう』と、その笑顔が物語る。
阿呆かと、言ってやりたい。世の中のすべてが可と否だけで構成されているわけではないのだ。
半丁勝負や何かと一緒にするなと怒鳴りつけてやりたい。
「……………」
「鷲巣?」
ぐったりと、鷲巣は体の力を抜き去った。というか、自然に抜けた。所謂脱力感で。
そうだ、腹立たしいことに、アカギの馬鹿さ加減に腹は立っているけれど、確かに最初から己はアカギの言葉に頷いても首を振ってもいないのだ。
そうしてそれは、己にとっては頷いたも同じことだと、この白髪の狂人は深く理解をしているのだ。
「…寒い」
秋口とはいえ、アカギの腕の中とはいえ、風は冷たい。
「部屋に戻るか。あたためてやるよ、鷲巣」
むっつりと、沈黙。
また怒鳴りだすかと思っていたアカギは少々拍子抜けを、する。
数歩もない距離、両腕で抱え上げて歩き出せば、鷲巣が口の中でだけ「好きにしろ」と言ったのを、無論アカギが聞き逃す筈もない。
部屋に戻って丁重に寝台に下ろせば、片眉を顰めたまま見上げられた。
目尻の皺に口付ける。
「……わからん男だ」
憮然といった風情で零す。
畏敬も侮蔑も心酔も嫌悪も、当然のものとして、長年それらを浴びて生きてきた。アカギは違う。
それらとは全く別の感情を向けてくる。基本的に、その感情は無色透明であるように、鷲巣は感じている。正も負もない。
熱意ではあるのだろうが、では”それ”なのかというと、違う。
ただ当然のこととして、月が欠けてまた満ちるのと同じくらいの道理として、鷲巣巌の傍らで、赤木しげるは存在する。逆も然り。
「…ククク」
わかっているくせにと、アカギが笑う。わからないことに、妥協も屈服も流されもしないくせに。
覗き込んで笑うアカギの前髪を、容赦ない指が乱雑に掴んで引き寄せた。
「…………あたためるんじゃろ」
早よせい、と。
不機嫌に促した鷲巣の唇が、同じく唇で塞がれた。

 







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