いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2009.10.12,Mon
こっちもオリジナル。
某所のじぇすさん。
椅子に掛けて、あくびをひとつ。
やはり(物凄くいまさらだが)物理的な視力がないというのは非常に不便なことだった。
一応、魔力をセンサー代わりにしているとはいえ、目の代用品にするには常にじわじわと魔力を消耗しなければならなかったし、それは現在の、上級火炎魔法を一発打てばヘバってしまう体には、実は少し辛かった。
とにかく、何もかも足りない。
一番近いところでは金が足りない。
またかと男はうんざりと息を吐いた。己の金遣いが荒いのに責任はあるのだが、だからといって自重する男ではない。金が無いのは首が無いのと一緒だと、初めて言ったのは誰だったか。しょーがないので、ギルドに赴いて今の自分でもこなせそうな依頼を見繕ってくる。
やろうと、思えば、恐喝だとか強奪だとか、出来はするが、流石にいまさらそのようなミニマムな悪事に手を染めるのは、ビミョー、だ。
蓄えはすべて「あっち」に置いてきてしまったし、どうしようもない。
金は無いわ魔力は無いわ、持久力も筋力も無いわ、ないない尽くしである。
そのないない尽くしの状況で、慎ましく生きていこうという思考もまた、この男は持ち合わせてはいなかった。筋力トレーニングを再開し、現在の己のキャパシティをぎりぎり越える魔力吸収を繰り返し、術具や媒体もすっかり失っていたので己の血肉を(文字通り)削り、作り出す。
存外、器用な男であった。
その器用な部分を他人に見せるのを嫌っているだけ。
そんな不遜な男ではあったが、上級魔法一発放って己の魔力が枯渇したのは流石にがっくりきて、半日ほどの不貞寝が続いた。具体的に例を挙げるなら「エクスプロージョン」一発でMP0になったのだ。それはない、と零した男が毛布に包まってフテた所で、以前の彼を知る者ならば誰が責められよう。
現在はかろうじて、一発放ってぶっ倒れない程度の体力と魔力を取り戻しはしたが、本当にただ「倒れない」だけなので男の苦悩は続く。あーやだやだ昔は良かったーと減らず口叩く男はあいも変わらず他人に自分の努力やら苦労やらを見せるのが嫌いなので、傍から見れば日々だらだら過ごしているだけにしか見えないだろう。
魔術用の道具と、机と椅子くらいしかない部屋、床に寝転んで空を見上げる。
相変わらずの狂った月が浮かんでいた。
本当に。
男は思う。
此処は自分の駄目な所だなあと自覚しながら、思う。
さびしいとかせつないとか、思慕とか罪悪感とか、そんなものは無いというのに、あの飯が食いたいなーと、そんなことを思うのだ。もっと他に思うところがあって良いだろうと自分ツッコミをしながら。
「…あー…、目ぇ、どーしよ。文字さえスムーズに読めるよーになったら、それで良いンだけどなー」
腹減ったぁ、と呟いて、床と同化するくらいにへばる。
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