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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2010.11.01,Mon
誰かに似ている、うちの三成は。
あ、で始まって、る、で終わる俳優パロの人に。




――あァ、もうちと、…遠い…

大谷刑部は苦戦していた。
座したまま、伸ばした手がどうしても棚の書物に届かない。
立ち上がれば済む話というのは、健全な人間の健全な言い分であろう。

震える指先、伸びきった腕の筋。上げた顎と首がそろそろ辛くなってきた。

無論、
例の、力を使ってしまえば直ぐにそれは手に入る。
しかし日常生活においては出来る限りソレを使うまいと、大谷は己に枷を付けていた。そんなことをし続ければ、もっと弱る。もっともっと弱る。それは許されない。

「……嗚呼、愛しき我が目的よ、遠くてかなわぬ……」

殆ど諦めた細い手が、パタパタと棚を叩いて落ちる。
更に諦めた細い体が、ゆるゆると畳に崩れて落ちた。

ごろん、ころん。

「歯痒いハガユイ」

ころん、ぱたん。

蝶は畳の上、ふて腐れる。衣を羽のよう揺らし、掌で畳を撫でるよう叩き、身を捩る。






それを見つめる目、二対。







「(ぁああああああ私の刑部ゥううううう、なんと愛らしいのだ貴様はぁあああああああ ぁあああああああ!!!!!!!)」

障子の合間から中の様子を伺っていた三成と、その後ろに控えた黒田の視線であった。

悶える凶王にどうツッコミをいれたら良いものか。心の声がダダ漏れ過ぎて聞こえてくるから止めて欲しい。

「いや、っつうか取ってやれよ、お前さんが」
「最終的にはそうするに決まっている!!! だが、ああやって不貞る刑部はなにより愛らしい。もっと見たいだろうが、馬鹿か貴様は。だから刑部に暗と呼ばれるのだ貴様は。ああ、愛らしいぞ私の刑部っ…!! 私の愛しい蝶の化身…」
「罵倒か惚気かどっちかにしてくれ…」

怒ればいいのか、気持ち悪がったらいいのか。両方か。両方なのか。

「――誰ぞ」

流石に、コソコソとはいえバタバタとした気配に気付いたのか、中から大谷の短い詰問が飛び出した。

「刑部、私だ」

キリッッッ

うん、わかってた。小生わかってたから脱力しないぞう。

「三成か。入りやれ」
「うむ」

すらり。
開けた障子の先の光景に、残念な凶王は残念ながら再度崩壊した。

「刑部ッ…!! なんという格好をしている…!」
「ヒッヒ、引っくり返ってしもうてな、起き上がるのも億劫になっていたところよ」

ころりと、無防備に仰向けになった異形の軍師は、三成へと向かって両腕をゆるりと伸ばして反り返って笑っていた。
立てられた膝の合間、包帯にきちりと巻かれた両足が覗いている。

どかどかどか。
すぱぁん。

どえらい勢いで三成が部屋に入ったところで、鼻先で障子が閉められた。
いや別に、見たところでどうというわけでは。言っても無駄なので、黒田はやれやれと息を吐いて廊下に座り込む。

三成が大谷を抱き起こし、着衣を整え、まあなんやかんやを済ませたら障子はもう1度開けられるだろう。なにせ、黒田の抱える書簡やら書籍やらの紙の束を所望したのは大谷なのだから。

「あー、小生は不運じゃ、不運」

呟く声音は案外、暗くはない。
柱へと背を預け、暫しの時間潰しかと、沈みゆく夕陽を眺めることにして。

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