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いわゆる裏的な
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Posted by - 2024.11.01,Fri
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Posted by 瑞肴 - 2010.11.08,Mon
まだ途中。ぴっしぶに上げたものより少し長いです。
迷走中…。
ぬーーーー、長編を書こうと思って書くのは久しぶりで、うーん、うーん。

ご興味の沸かれた方のみ、どうぞ。大谷さんと三成と、会話の中だけ官兵衛。









銀月は本日も麗しい。
良き哉、良き哉。
大谷はひっそりと唇で弧を描いて囁いた。
しかして三成にその囁き声は届かない。ごちゃごちゃと、書物やら薬やら包帯やらが詰め込まれ積まれ、敷かれた大谷の私室にて、座した三成は声音の剣呑さを抑えようともしていなかったからだ。
「あの男は、危険だ」
「そうよなァ」
一頻り三成が語っていた内容は、こうである。
黒田官兵衛は直ぐにでも反逆の徒になり得るだろう。
あの男は、信長が討たれたとの報が届いた途端、これぞ機運だと秀吉に進言をした過去がある。当時、まだ豊臣は織田の配下である。
だというのに、織田家への配慮を微塵も見せぬその態度、あるまじき。
そのような様では――まかり間違ってもあり得ないが――秀吉様が何らかの危機に陥った場合、黒田が出る行動など読めようものだ。
まあ、まあ、一々尤も。
そも三成は、理論と理屈からすれば『尤も』なことしか主張しない。当然か。
「しかし三成、官兵衛殿は亡き半兵衛様もお認めになっておった軍師ではないか」
進言も、秀吉様を思ってのこと。軍師としての主君へ呈した策。そうであろ。
言いやれば、三成は眉間の皺をますます深くさせた。
否、どうやら少し種類が違う。
臍を曲げたような顔を、している。
「三成?」
憤慨ではなく臍を曲げるか。竹中半兵衛と並べることへの怒りと反発がくると思っていた大谷にとっては予想外。
「…庇うのか、刑部」
低く唸るよう零されて、首を捻りかけた寸前で合点がいった。成る程、そちらか。
我が友はやはり実に面白い。
どうやら、己が黒田を庇う物言いをしたのが面白くないらしい。豊臣へ害を為すかもしれないものを庇うな、というよりは、普段滅多に誰かを庇うなどしない大谷が、よりにもよって黒田を庇ったのが引っ掛かったのだろう。
「ヒヒッ、官兵衛殿は半兵衛様に次ぐ我の師であると、ぬしも知っておろ」
三成の顔がますます歪んだ。
歪んだ顔(かんばせ)すらも美しい。月を肴に三成の顔でも眺めていたいところだが、生憎と今は日中。障子からは薄い陽の光が入り込んでいる。訪ねてきた三成を招きいれたは良いけれど、これも生憎、処理すべき仕事が溜まっている。
頃合かと、大谷は一度居住まいを正した。つられて三成も体を揺らす。
「豊臣にはぬしと我が居るなれば、あの男はもういらぬかもしれんなァ」
意を得たりと頷かれる。
三成はまことに分かり易い。分かり易過ぎて、分かり難くなっている。難儀な男だ。歳を経ればマシになるかと淡い期待を抱いた時期も、あった。
軽く十年は昔の話である。
実のない過去は一旦記憶に仕舞いこみ、大谷はゆっくりと決定打となる言葉を吐き出した。


「策ならば我が練ろ、太閤のため、――ぬしのため」


三成と大谷の会話があって、ひと月も経たぬ間に大谷の九州行きが決定した。
先に備えて、港の整備や物資の調達を確認してくる他、それに関わる様々の雑務がついてくる。元々そういった仕事には三成も携わっており本来ならば大谷に同行するところだったが、生憎北への遠征が急に決まってしまって叶わない。
その遠征の出立の日の朝、三成は大谷の大阪での邸に現れた。
ようやっと陽がその顔を見せたという時間帯。現れた三成を、それでも邸の者はあっさりと迎え入れまだ床の中にいた大谷へと取り次いだ。
大谷が、三成が来ればそのようにと事前に言い置いていたからだ。
ぬしの考えることなど、お見通しよ。
そういった台詞があったかどうかは、さておいて。
「入るぞ」
「あい、あい」
入ってよいかと聞かれた試しがない。
「刑部」
挨拶もそこそこに、名を呼んで真っ直ぐに見つめてくるのだから敵わない。
構わぬかと寝着のまま、かろうじて、包帯をまったく巻いていない頭部のみ頭巾で覆い隠した大谷は、まあ座りやれと、こちらは包帯できちりと巻かれた指先で畳を軽く叩いた。三成が促されるままに腰を下ろす。
「ぬし、今日が出立ではなかったか」
「貴様もだろう。だから、顔を見に来た」
「さようか」
暫く、沈黙が満ちた。
それは決して居心地の悪いものではない。
「…無事帰れ」
やっと吐き出された言葉は短い。短いが、それに尽きる。
言の葉を操り謀り惑わす大谷は、三成が吐く短い言葉をなにより好んだ。
「案ずるでない。ヒ、ぬしは我が信じられぬか」
捻くれた返答をしながら手を伸ばし、三成の頭を横からそっと撫でてやる。布越しであれど体温は感じ取れる。三成の表情が自然に緩んだ。ほんの僅かな変化であったが。
「否、疑う余地無し」
三成は嘘を吐かない(吐けない、とも云う)、ああ、また生きて帰らねばならぬなと、大谷は自嘲と愛しさに目を細める。本当に信じているのだ、三成は。まったくもってかなわない。
「であろ。さあ三成、もう行きやれ、太閤の進軍に遅れるつもりか?」
ぎりぎりの刻限であることもお見通しだ。
三成が本気で駆ければあっという間の移動は可能だろうが、進軍前に全力を出させるわけにはいかない。

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