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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2010.11.10,Wed
続いてます。
出来はさておき、なんとなく長編の書き方思い出してきたぞう。






「であろ。さあ三成、もう行きやれ、太閤の進軍に遅れるつもりか?」
ぎりぎりの刻限であることもお見通しだ。
三成が本気で駆ければあっという間の移動は可能だろうが、進軍前に全力を出させるわけにはいかない。
促され、渋々立ち上がりながらしかし、障子を開ける時分にはすでに治部少輔の顔付きになっていた。こういうのを、仕事の虫というものか? 微苦笑を零した大谷にいってくると告げ、三成は大股で歩き出していった。
さて、今度は自身の出立準備だ。
欠伸を一つ噛み殺し、大谷はするりと部屋に戻った。
数刻後には、馬に揺られて九州までの旅路に出なければならない。
道連れは、黒田官兵衛。



今回の旅路の同行者に、黒田をと指名したのは秀吉だった。大谷は、まだなんとか馬には乗れるが体力は無い。常ならば三成が大谷の無い体力を埋めて動き回るが、今回はそうもいかず。
小姓の時代から何かと面識のある黒田にならば、偏屈な大谷も何かと頼り易かろうというのが指名の理由だ。
二人だけで時間を過ごすのは実に久しぶりだった。
以前は孫子や呉子など兵法について語り合うこともあったが、黒田が荒木村重の有岡城に監禁され、その間に竹中が没し、両兵衛の片割れは欠け、残りは没するという事態に陥り、それどころではなくなった。
省みる暇も嘆く暇もそうそう取れぬまま、大谷は豊臣の軍師としていかんなく才能を発揮し、質、量ともに実によく働いた。
「(痩せたか)」
斜め後ろをいく大谷に、黒田はちらと視線を馳せる。
2年はまともに顔をあわせていなかった。
官兵衛と出会って暫くしてから発症した大谷の病の進行は止まらないようで、もうすっかり包帯と頭巾で顔は隠されてしまっている。かろうじて覗く目元の肌には随分と酷い爛れの痕が垣間見れる。
「お前さんと話をするのも久しぶりだな」
大谷は喉を引き攣らせて同意し、頷いた。
「話どころか、官兵衛殿の”顔”を見やったのも久々よ」
監禁先から帰還した官兵衛がまずはと秀吉に顔見せに行ったとき、大谷は三成と共に秀吉の傍へ控えていた。しかし当時は、急ぎ目通しだけでもと取るものも取らず――つまり平たくいうなら、髭も剃らず身も整えず――参上したので、伸び放題の髪と髭に覆われていた官兵衛の”顔”は誰にも伺うこと叶わなかった。
後々なにかと揶揄されたので、お前さんまでそれを言うかと口をへの字に押し曲げる。
「そういやあの時、珍しく三成が笑ってたな」
小生の帰還が喜ばしかったわけでもなかろうにと付け加える辺り、むくつけき外見ながらも黒田は繊細かつ鋭い洞察を持ち合わせている。
「ああ、アレは…」
あのとき
秀吉公の前に現れたモジャモジャに、当然三成は眉を顰めた。
仏頂面に磨きをかけた友を見て、大谷はやれと息を吐く。
一応、めでたい席だ。官兵衛は丸一年半土牢に監禁され、解放された当時は歩行もままならぬほど足を弱らせ、陽光に顔を背けるほどに目も弱らせていた。
それでも、豊臣の不利になる情報は荒木方に漏らしはしなかったのだから、秀吉の左腕である三成が官兵衛を迎える際、このように仏頂面のままでは体裁が悪い。そもそも悪い評判がもっと悪くなる。
ひっそりと、大谷は三成の着物の裾を引っ張った。
『三成、三成よ』
『なんだ刑部、秀吉様の御前だぞ』
ぬしこそ、公の隣に立つということをちとは意識しやれ。
この場で言おうものなら大騒ぎだ。『どういうことだ?!』だとか、声を荒げて噛み付かれかねない。
故に大谷は別の言葉を選び取る。
『いやなに、官兵衛殿がな、穴倉に居たというだけあってまるで穴熊のようにむくむくと、愛くるしい姿になったと思うたのよ』
びしり。
明らかに強張る表情ののち、珍しい三成の咳払い。
『刑部、疲れているのか? 目に疲れが出ているのだきっと。近いうちに時間をとって遠乗りにでも行くぞ、海を眺めれば疲れもとれる』
『…ヒヒ、やれ嬉しや、棚から餅が降りやった』
そうしてやっと、三成の表情は緩められる。
ざっくりまとめるとつまり、官兵衛自身と三成の表情はまったくなんらさっぱり関係無い。
「―――と、いうワケよ」
予想はしていた。いたが、改めて種明かしをされるとガックリくるものだ。脱力で項垂れた官兵衛に、大谷の人の悪い笑い声が被せられた。
「しかし、相変わらずというか、流石に三成の扱いはお手の物だな」
前髪に隠れてしまっている両目に、見据えられる。
大谷はそれには素知らぬふりで、遠くまで続く道の先を見つめていた。



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