いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.06.29,Tue
これはひどい むこうぶちSS
氷の男と狗と、おかーさん。
氷の男と狗と、おかーさん。
「風呂はどうする」
「は…」
どうしよう。
問われた単語とは違う意味で、江崎は細い目をさらに細めた状態で状況を把握しようとした。
ここはラブホテルだ。
すでにそこからツッコミ所満載だが、それはまだ江崎にとってはツッコミ対象にはならない。
照明がパープルピンクなのはもうしょうがない。なんたってラブをメイクするホテルである。しょうがない。
問題はベッドだ。
巨大な。シェル。貝。名画 ヴィーナスの誕生において、愛と美の女神が楚々と堂々と立つ、例の貝殻。
あれを模倣した形のベッドが、部屋の真ん中に、どどんと。
既に…
既に相手はネクタイをはずして背広を脱いでいる。そこはかとないドヤ顔は氷の男の本気を伺わせた。嫌がらせでもなんでもない、ようで。
どうしてこうなった。
江崎は瞼を伏せた。ちょっと、どうして良いかわからなくなったので、混乱の源であるベッドを視界から追い出すために。
こんなファンシーな物体の上で、髭面の中年が突っ込まれる…。
路地裏か公衆トイレででも強姦された方がまだマシだと江崎は思った。
「(色々と大切な物は失ってきたと思っていましたが、この私にまだこんな失いたくない物があったなんて…気付かせて下さってありがとうございます帰っていいですか!!?)」
「おい、風呂は良いのか?」
「はィ?! ああ、どうぞお先に。私は後からで結構ですので」
数分、空白。
「 !! いけません、つい、逃避したいばっかりに意識が飛んでいました!」
日蔭は風呂場に消えている。
もういっそ、このままこの場を去ってしまおうか。後でまた殴られるだろうが、江崎はそれよりも守りたいアイデンティティーがあることを知ってしまった。
がちゃがちゃと、音。
呆然の空白時間が思っていたより長かったのか、江崎が腰を浮かせかけたそのとき、風呂場のドアノブが動かされる。
「間に合わない…ですね」
廊下へ出る為のドアは、風呂場の前を通らなければならない。
絶体絶命(アイデンティティー的な意味で)の江崎は最終手段として、ポケットから携帯を取り出すと、短縮ボタンでもって、とある人物にワン切りの電話を、掛けた。
さて、そろそろ帰宅しようかとパソコンの電源を落としたところで携帯にコールが掛かってきた。
出ようとしたのだけれど、たった1回のコールだけで切れてしまう。着信履歴には、見慣れた名前。
「…江崎…?」
ワン切りという行為があるというのは、後堂も知っていた。しかし江崎がそのような携帯の使い方をしたことはない。
掛け間違いか何かでしょうかと、携帯をポケットにしまいかけ、しまいかけた所で後堂には閃くことが、あった。
「江崎…」
「あっ、あの、私も軽く汗を流してきます!ね! ね!!」
あえてマナーモードを解除していた江崎の携帯電話が、鳴った。
「すみません! 一寸失礼ッ」
光の速さで電話を手にした江崎が、相手の名前も確かめない勢いで通話ボタンを押す。
『江崎、何か…』
「後堂!!! そうですか仕事ですかしょうがないですねえ直ぐ向かいます!」
あえて、名前を出す。
日蔭は先日のホールドアップ事件がそこそこトラウマのようなので。
「…後堂? あの禿か」
案の定、表情を歪めながらも会話に割り込もうとはしない。
『……あの男ですか。嫌なときに嫌という意思表示をしないから、そういうことになるんです』
「いえ、そうでもないのですが、なにぶん限度というものがありまして」
『さっさと戻っておいでなさい』
「はい、直ぐに」
流石後堂。私の認めた雀士。素晴らしい読みですGood Job!!
通話を終了した江崎は、殊勝な顔で日蔭と向かい合った。
「申し訳ありません、急な仕事のようで…。どうしても私の手が居るらしいンです」
「…ふん、犯罪者も忙しいものだな」
「そうなんです、ほら、貧乏暇なしって言いますしネ。この埋め合わせは後日必ず」
この~、の件(くだり)の時点で江崎は既にベッドから離れて上着を羽織っている。
「あ…おいッ」
くるりと振り返った江崎、キラニとウインクを残し、退場。
「………」
そこで頬を赤らめる時点で色々と手遅れです本当にありがとうございました。
無事事務所に戻った江崎は訝しがる後堂に 『貝の上で具になるところだったんです』と訴えて、意味が判りませんと一蹴されたのだそうな。
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