いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.08.30,Mon
むこうぶちSS
後堂×江崎。
後堂×江崎。
ふと気付いた。気付いてしまった。
「(いやぁああ指輪填めてるぅううう!!!)」
麗らかな、午後。
外から戻ってきた江崎は気の効く部下に番茶をいれてもらって、湯飲みを手渡されたところで気付いてしまった。
後堂の手に、指輪。
同じ指輪。
先日、自分が薬指に填められたものと、同デザインの。
ずる。
茶を啜る。
間が悪いことに、事務所に2人きり。
聞きたくない、絶対に聞きたくない。
それの内側に小さなダイヤついてませんかなんて、聞けるはずもない。
だってこの指にはまだ、銀色の指輪は填められたままなのだから。
「江崎」
「はィい?!」
思わず裏返ってしまった。
不審がるでなく、後堂は薄紙に包まれた最中を、江崎に。
「どうぞ。頂き物です」
「ぁ、ありがとうございます…」
ぺりぺり剥いて口に運ぶ。
小豆の良い香りと、しっかりとつけられた甘みは疲れた体にありがたい。
片手に湯のみ、片手に最中。
正しい日本人のオヤツスタイルでモサモサ口を動かして。
「……後堂、卑怯です、時間差攻撃なんて」
やはりスルーしきれなかった。
私、まだまでですねえと内心後悔するものの、零れた言葉はもう拾えない。
目だけ動かして、自分の机に戻っていた後堂を窺うと、微かに、面白そうに笑っていた。
「あの日の翌日、貴方はそれを着けてこないのではと思っていました。けれど貴方の指には翌日も、翌々日も、私の贈ったものが填められていた。…自惚れても良いと思うのですが?」
やだ。この秘書怖い。
がくぶるがくぶる。
思わず最中を握り締めたので、中身の餡子が飛び出した。
「最中が圧死しそうですよ、江崎」
「あ、はい」
慌てて、指ごとかぶり付く。
それを黙って見守られている。居心地が悪い。
あれから、軽く一ヶ月。後堂から数日間離れて仕事をすることも何度かあった。入浴時、就寝時、いつも外そうと指を伸ばしかけて、いつもいつも未遂に終わった。
それを見ると、安堵できた。まだ「この世」に生きているのだと、卓についていないのに実感できた。
「…~指輪…、外したいンです」
「…そうですか」
「外したくないから、外したくなる」
「ええ」
わかっています。
頷かれる。
「やめてください」
「やめません」
何をか、どうしてかは互いに言う必要もない。
進退窮まった江崎は、残りの最中を口の中へと放り込む。
「まだありますよね、下さい」
「わかりました」
素直に腰を上げられ、目に見えるほど江崎の両肩が落とされた。
最中のように、この厄介な銀色も食べてしまえれば良いのにと、深くため息を吐きながら。
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