いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.09.07,Tue
むこうぶちSS
ひかえざ+華僑組
ひかえざ+華僑組
「…江崎 それは?」
事務所にはどうにも不似合いな花束を抱えて戻ってきた。
一抱えほどの、白い薔薇。
「頂いたンです」
「……そうですか」
何故。
そうは思いながら、確か何処だったかに花瓶がしまわれていたような気がして立ち上がる。以前、掃除をしていたときに、どこかで。思い起こしながら室内を漁りはじめると、何をしているのか察した江崎がありがとうございますと小さく笑う。
「誕生日でして、実は」
「…は」
驚いて、振り返る。
それはまあ、江崎にだって誕生日くらいはあるだろう。わかってはいるのに思わず驚いてしまった。
「それは、…おめでとうございます」
唐突過ぎて気の効いた言葉が思いつかない。
誕生日プレゼントをわざわざ贈る間柄かというと、違う。
食事でも、というには時刻が遅い。
思い悩みながら花瓶を洗っている横で、江崎は花束から包装を取り払い、台所用の鋏を取り出していた。
ボウルに溜めた水の中で、茎を斜めに切断。
「…誕生日プレゼントに、薔薇ですか」
この華やかさは、江崎のイメージでは無いような気もする。
一点の汚れもない純白の薔薇は、満開のものや蕾も合わせて、数十本。
「偶々誕生日の話になって、今日ですって言ったら怒られまして…その時近くにあった花屋に押し込まれたんです」
江崎は面白そうに、喉を鳴らして笑っている。
綺麗になった花瓶に水をいれて、受け取った白い薔薇を活ける。事務所に似合う似合わないは別にして、美しいのは確かだろう。
「まさか薔薇を選ばれるとは驚きました。白、お好きなんでしょうかねぇ、スーツもいつも白ですものねえ」
後堂は、花に詳しいわけではない。
どちらかといえば、疎い。けれど。有名所の名前や、簡単な花言葉なら、知識として少しばかりは持ち合わせていた。
「『それがいいだろう』って、…こんな華やかな花、私には勿体ないってお断りしようとしたんですけど、気付いたらもう花束になっていて」
店員サンを驚かせてなかったでしょうかと、飾った花を様々な角度からチェックしている江崎に、言うべきかは判らない知識が浮かぶ。
白い薔薇の花言葉は、『敬愛、尊敬』。
まさか、解っていてそれをあの男が贈るとも思えない。
「…貴方のイメージだったから、選んだのでしょう。悪くないと思いますよ」
「そうですか?」
なんだか気恥ずかしいですねえと笑う江崎も、花言葉までは知らないように思えた。
知っていたなら、さり気無く他の花を選ばせるか、受け取らなかったろうなとも思う。
花はただただとても美しいというのに、酷く遣る瀬ない気持ちになった後堂は、何処に飾りましょうかと花瓶を抱えることで江崎の視線へ背を向ける。
幸せから背をそむけたい狗に、余計なことを告げてしまわない、ように。
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