さあ食べよう

俳優パロだと平和でいいよね。
むこうぶちＳＳ。

素麺→冷麦→冷やしうどん→マロニー




「マロニーはっ…、マロニーまでいったら戦争だろうがっ…！！！」

ポン酢掛けマロニーの入った碗を片手に、日蔭がテーブルを拳で叩いた。

「ですよねぇ、マロニー生あったかいですもんねえ。夏には不向きですよ後堂」
「違う、違うぞ江崎、俺の言いたい所はそこじゃない」

ことり。碗を置く。

相も変わらず、びんぼう、な華僑プロダクション。
夏のメニュー。麺特集バージョン。
肉もなければ野菜すらない。薬味はかろうじて、根をプランターに植えて何度も生やしている葱と、すくすく育っている二十日大根が添えられている。

「心配しなくても、夕飯用には今素麺を茹でています」
「そうではなく…！」

湯気でくもった眼鏡で見据えられた。

「では、なんですか？」
「後堂、素麺は素敵ですけど、私、ハムとか卵とかタンパク質も食べたいです」
「そうだ！　俺が言いたいのは大体そんなところだ！！」
「ああ…」

生ぬるく、かつ冷たい反応が返される。

「…江崎」
「はい」

後堂が、優しく微笑んだ。
俺は無視か。日蔭は思った。

「本当なら、こんな事をするつもりは無かったのですが…　いつも仕事を頑張っている貴方だから特別ですよ」
「え、なんですか、なんですか？」

わー、なんだろう。
呑気に期待する江崎と、疑心の目を向ける日蔭。
後堂は菜箸でなにかを抓みあげると、そっと、江崎の碗の中にたゆたっているマロニーの上に、それを乗せた。

ピンクの素麺（１本）。

「　！　色つき…　そんな、良いんですか？　後堂」
「ええ、どうぞ、貴方に差し上げます」
「…後堂…。すごく嬉しいです、ありがとうございます」

せめて素麺を出すときに一緒に混ぜて出してやれとか
ポン酢で素麺食わす気かとか
ピンクも白も栄養価は変わらんだろうとか
第一話題を思いっきり変えられてるじゃないかとか
喜ぶな馬鹿！！とか

ツッコむ所が多すぎたので、黙って箸を握り締める日蔭である。

「…ご自分で卵を買って来られるなら、出汁巻き卵くらいは作って差し上げますよ」

箸でピンク素麺を抓んで蛍光灯にかざしている江崎を横目に、後堂が中指で眼鏡の位置を直しながら、告げる。

「…買ってくればいいんだろう、買ってくれば…。ついでに錦糸玉子も作って江崎に食わせてやれ…！」

不憫過ぎるわ！！

立ち上がると、薄っぺらい財布をポケットに捩じ込む。
マロニーを置いて出て行ってしまった日蔭に首を傾げた江崎は、これ食べちゃって良いんでしょうかと後堂に問い掛けて、問われた後堂はコクリと非情に頷いたのであった。