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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2011.04.05,Tue
過去記事にも拍手ありがとうございます。
だいたい、どうしようもない攻ばっかりです。

以下
むこうぶちSS
華僑組と氷の男。
 






時々、電話が掛かってくる。
掛かってはくるのだが、日蔭は喋るのが下手だ。人の怒りと嫌気は的確に煽れるのに、日常会話は著しく下手だ。人間関係を構築してこなかったツケが出ているのだが、日蔭自身は別に構わないと考えているので救えない。しかもまた現在それの相手をしているのが江崎であるので、他者による改善も今のところまったく期待できない。不毛このうえない状態である。
ともあれ、江崎は事務所にて、日蔭から掛かってきた電話を受けていた。既に三十分ほど経過したろうか。
無理に切る気もないのでダラダラと相槌を打つ。
人と喋りなれない日蔭が言葉を多量に紡ぎ出すのは一仕事であるだろうに、頑張りますねえ、だとか、完璧に他人事として見守る江崎であった。
「―――あ、」
長い足を机に投げ出していた江崎が、受話器を肩に挟んで新聞を広げた状態で声を上げる。
『どうした』
また、突然発された声であったので、いぶかしんだ日蔭からそのような問いが発される。
「いえ、なんだか急にシュークリームが食べたくなってきたので、一寸買いに行ってきます」
『はあ?』
「というわけで、失礼しますね」
手軽に不二家にしようか、それとも少し足を伸ばして洋菓子屋に。
既に心はカスタードクリームに飛んでいた江崎が受話器を耳から離したところで、そこから割れんばかりの大音量が。
『それで電話を切る気か!!』
一応、昼間なわけで。事務所内なわけで。
ちゃんと仕事していた後堂は、聞こえてきた怒声に手を止めた。
「買いに行かないと無いんですよ」
『誰がそんな話をした!! 貴様の中で俺とシュークリームの優先順位はどうなっている!!!!』
悪びれない江崎と、ほとんど半泣きのキレた怒声。後堂は広い額に指先を当てた。酷い。流石に酷い。これは江崎が悪い。今まで相手をしていたくせに、幾らなんでもその切り方は無い。
「…江崎、シュークリームは私が買って来ます。ですから相手をして差し上げてはどうですか」
溜め息を吐きながら立ち上がり、コートへ手を伸ばす。
江崎の使い走りというと少々引っ掛かるが、哀れな男を一時的にでも救ってやれるなら、ちょっと足を伸ばすくらい容易いものだ。
「そうですか? 悪いですねぇ」
『……なに?』
「なんだか後堂が買って来てくれるんだそうで、お話続けられるようになりました」
『はぁ?!』
世話の掛かる中年を置いてドアへと向かった後堂に、またしても電話口からの怒声が聞こえてきた。
『なんだそれはソイツには買いに行けと頼めて俺には頼めないということか! 買って持って行ってやるから其処に座って待っていろ!! いいな!!!』

ガチャンッ
ツー・ツー・ツー

「……買いに行かなくてよくなったみたいですよ、後堂」
「…………」
そういうプレイなんですか。
聞きかけたが、寸でのところで止めた。江崎は知らないが日蔭は素だろう。
「…では、それまで仕事をしていてください。お願いしたいものがあります」
「はい」
素直に返事をした江崎に、コートを脱いでから書類を渡した。
そして三十分強。
事務所への階段を駆け上がってきたのだろう、肩で息をする日蔭が扉を蹴破って登場する。大きな紙袋を両手に持って。
「お早い到着ですね」
「…っ、貴様が、食いたいと、…っ!」
ぜえはあ。
どさりどさり。来客用のテーブルに置かれた紙袋には、紙箱が幾つも詰め込まれていた。シュークリーム、にしては量が多い。
「あれ、日蔭さん、こんなに買って来て下さったんですか?」
開けてみれば1箱に3つは入っている。それが何箱もあるわけで。
口をへの字に曲げた日蔭が、眉間の縦皺も深く江崎をねめつける。
「貴様以外にも此処には人がいるだろうが」
だが、一体何人が此処で仕事をしているのかまでは知らんから、とりあえず多めに持ってきた。
思わず眼鏡を外して目頭を軽く押さえる後堂である。一方の江崎は嬉々としてパカパカ箱を開けていく。空気を読みなさい江崎。いや、読んであえてのこれか。
「ありがとうございます。 …チョコレートのもあるんですね、あ、これ抹茶ですか私抹茶はまだ食べたことないです、これは?キャラメルの香りがしますねえ」
どんな顔で買ってきたのか。まあいつもの仏頂面だろう。此処から此処まで全部、をやったのかもしれない。日蔭の愛情表現には常々疑問を呈したい後堂だったが、評価を少し変えることにした。
眼鏡を掛けなおし、事務所に備え付けの簡素なキッチンへと向かう。
「…コーヒーでもいかがですか? そんなにあるなら、是非貴方もご一緒に」
「………。 …! 俺か?! …あ、ああ… …なんだ、珍しいことを言うな」
あんまり慣れない対応過ぎて聞き流しかけた。
それなら、と頷いている日蔭の横で、既に江崎はシュークリームに齧り付いている。
「美味しいです日蔭さんありがとうございます」
「手間の掛かる奴だ。自分の腹具合くらい自分で管理しろ」
そうではなく、そこではなく。
粉を挽く後堂は、日蔭の為にツッコミを放棄した。当人たちが良いなら、いいのだ、多分。


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