いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.02.25,Thu
俳優パロ。
人間関係は更にカオスかおす。
今回は平山幸雄氏。
「平山さん!」
あ、ウザい予感。
感じたのは一瞬。
しかし、そんな予感ばかりが当たってしまうのが、世の常だ。
「明日はバレンタインですね!」
なんでそんなハイテンション…。いや、いい。言わなくていい。
「鷲巣さんに、花を贈りたくて…」
ああうんやっぱりね。そうくるよね。
平山は、アカギのことは嫌いではない。
むしろ、芸暦と実績からすればてんで格下の己に対して、年長者として、そして役者としての敬意を払ってくる青年に好感を持っているほどだ。
「それで、鷲巣さんには薔薇の花とか、そういう艶やかな花が似合うと思うんです。でも中々これだっていうのがなくて。あ、候補は一応絞ったんですけど、そういえば平山さんは花に詳しいって聞いたことがあったなって。鷲巣さんに贈るものはこの世で一番素敵なものにしたいから、良い花屋をご存知なら教えていただきたいんです」
最後の約20文字だけ伝えてくれれば充分だったなあと、ちょっとゲッソリしながら平山は思う。
しかしまあ、恋人に贈るものを此れほど熱心に探し求める若人相手に意地悪する気にはなれないのが、平山幸雄という青年だった。
「ああ、薔薇なら良い店を知ってるから教えてやるよ」
メモあるか?と続けかけて、ふと、平山はかぶりを振る。
そうか、バレンタインなのかと、気付いたので。
「平山さん?」
「…いや、一緒に行くか。俺もちょっと用がある」
バレンタイン。
その日にチョコレートを貰えるのだと知ったのは、もう随分昔の話。
小学生の頃、学校の机にそっと忍ばされたチョコレートの包み。
ドキドキしながら、こっそり大切に持ち帰ろうとしたら運悪く、意地の悪いクラスメイトに見つかってしまった。
散々にからかわれ、挙句取り上げられてしまい、必死に取り返そうと揉み合っているうちに包みは地面に放り出されて走ってきたバイクに轢かれてぐちゃぐちゃに潰されてしまった。
差出人が誰かすら分かっていなかったけれど、とにかくそれが悲しくて酷い有様の包みを拾って泣きながら帰宅したという苦い記憶だ。
自室に向かう途中、家の主に涙を見咎められて訳を聞かれた。
素直に話せば、軟弱なと一刀両断に切り捨てられ、そういう追い討ちをかけられたのも手伝って夕飯の時刻になっても部屋に引き篭もって泣いていたものだ。
部屋が暗くなってきて少し怖くなってきたころ、唐突に襖が開けられた。
驚いて固まった己に、まだ泣いておるのかと呆れた声をかけた家の主はタブレットの缶を平山に投げて寄越した。
外国の文字が書かれた缶、描かれていたのはカカオ豆。
チョコレート菓子を与えられたのだと、数秒以上かけて平山少年は理解した。
それで良いじゃろ、もう泣くな煩わしい。
本当に煩わしそうに、彼女は告げた。
その年以降、彼女はバレンタインになると平山に至極簡素なチョコレート菓子を与えてくれるようになった。
手近にあったのだろうハワイ土産のマカダミアナッツチョコだったときもあるし、彼女の茶菓子として用意された様子のオペラの一切れだったときもある。あらためて用意しておくというよりは、常に、その時彼女の身近にあるチョコレート菓子だった。
あの家を出たのが一昨年で、それから彼女にはまったく会っていないから、2年、チョコレート菓子を貰っていないことになる。(無論、彼女以外からなら貰ったりはしている。しているのだが)
そんなことを思い返しながら、アカギを連れて、平山は久しぶりに馴染みだった花屋へと顔を出した。
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彼女は例のあの人です。
依和緒さん。
つづきます。
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