いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2009.09.05,Sat
俳パロです。
前の「ろくでなしの愛」の番外編というかワシズさんサイドのポエム的ななにか。
駄(目な神)域はほんとうに駄目な子だなあ。
そのひとの肌があたたかくて、驚いた。
乾いた肌。少し、不健康に思える。煙草もアルコールも飲むからだろうか。それほど嗜まないので分からない。
けれど、ただ驚いて。
振り払おうとしたけれど、あっさりと御された。それにまた驚く。体を鍛える為に武道は幾つか習っていて、体に染み付いたその所作で払ってしまった筈なのに、なんともあっさりと御されたことに。
からだがあつくて、少し怖い。
どうしてだろう。
このひとは、どうして。
以前から見ていた。素敵な人だと思っていた。圧倒的な技量と存在感。他人にとても厳しいけれど、自分自身にも厳しく、自分自身への妥協を許さない人のように見えた。勝手な見方だけれど、不器用な人なのだろうか、とも。
なんだかんだと派閥や所属の波に攫われ易い世界。驚くほど独りだった。独りで、少し猫背気味に、飄々と立ち尽くしていた。彼の技量に魅せられるものは多かったけれど、それを取り込もうという意思を彼はみせなかった。
ふしぎなひと。
それは、すべてのものを受け入れる父親を見てきた反動だったのかもしれない。
あんな生き方もあるんだと、ただ驚いた。
目が追うようになった。出演した作品を集めるようにもなった。
『君がそれ程一人の人間に固執するのは、初めてだね』
父親に言われて気付く。無意識に、ずっと無意識に、誰かを特別視することを避けていた。失って、またあんな痛い気持ちになるのが嫌だったからだろうか。
会ってみるかと問われ、相変わらずこの人の人脈は何処まで広いのだろうかと思いながら、首を横に振った。出来るなら、自分の力で会いたかった。そう伝えれば、父親は笑って頷いた。
後日、やっとその人と会えたのはそこそこの規模のパーティーで。
風の噂で、珍しくその人が出席するのだと聞いて、慌てて自分も出席できるようにと掛け合った。人が沢山居る場所は得手ではないけれど、そんなことはいっていられない。
広い会場、きょろきょろふらふらしていれば、案外直ぐに出会うことが出来たけれど、出会いはあまり素敵なものでもない。
乾杯用のグラスを手にうろついていたら、まさしくその人に見事にぶつかってしまったのだ。上着の裾を汚してしまって謝ろうとしたら、言葉を出す前に叱られた。
『前を見て歩けっ ふらふらふらふら、危なっかしいなアンタは!』
ぽかんと。
直接聞く声はこんな声なのか、本当に眉間の皺は普段からあるんだなどと、見当はずれなことを考えて。
すいませんと、やっと謝った自分に、その人はあっという間に背を向けて立ち去ってしまった。
叱られるなんて初めてだった。否、それは無論、血の繋がった父親になら(それでも一般からすれば随分少ない回数だが)諌められたことはあったけれど、他人から、しかも怒鳴るように叱られたのは初めてだった。
背負っている名前が名前なので、いつもどこかしらなにかしら遠慮される。その上に、仕事上での失態など殆どやらかさないので、怒鳴られる機会など皆無だった。
名前など関係なく見て貰えた気がして、ただひとりの相手として扱われたようで、嬉しかった。
そしてやっと、あの人が上着を汚されたそのままで立ち去ってしまったことに気付いて慌てて探したのだけれど、何処にも姿は見えず。
そういえば、怒鳴られたのは上着を汚したからではなく、自分が余所見をしながら歩いていた点だけだったのだと、思い出した。
意識が混濁していた。
昔の記憶が、奥底から引きずり出されてかき回されていた。
痛いのか熱いのか、他の何かなのか、分からない。
恥ずかしながら、というか、ひとにこんなことをされるのは初めてで、どう反応して良いのかもよく分からない。よく分からないまま出る情けない息と声が恥ずかしくて、何処かへ消えてしまいたい。
赤木と視線が絡む。
どうして、そんな目をするんですか? 口元は笑みの形に見えるのに、双眸は、攻撃的な鋭さの中に、揺れを隠して。
何処にもいったりしませんと、伝えてあげたいのに、肉体を襲う感覚のあまりの激しさに言葉が紡げない。
伝えられないまま、意識は再び混沌へと落ちた。
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