いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.07.15,Thu
気分は、敵地に乗り込む武将のようなものだった。
武将、て。
「――失礼します」
ノックを数度。
「どうぞ」
短く促す声は涼やかだった。
心拍数は跳ね上がり、それでも出来るだけ、緊張を表面には出さないように、アカギはドアノブを捻って引っ張った。
自分の控え室と同じくらいの広さの、部屋。
ソファーに座った傀は黒尽くめだった。夏なのに、暑くないのかなとチラと思う。
「はじめまして」
歩み寄り、見下ろさない程度の距離を保つ。
「赤木しげるです。撮影前に、ご挨拶をしておきたくて」
特徴的な髪型、黒い前髪の下で傀の視線が上がった。
猫かと思った。
鷲巣の目も猫っぽいけれど、それよりも鋭い。
「傀、と言います」
ガラスのコップの中で、氷が溶けて落ちたときのような声が発される。
「はじめまして。今日はよろしくお願いします」
じわ。
「…え」
挨拶を返しただけなのに、アカギの目の端に涙が浮かんできたので驚かされる。
ふるふると盛り上がった涙はそのまま、ぽろりとアカギの白い肌の上を伝い落ちた。
「アカギ、さん」
「……~っぅ」
「あの、…」
ほろほろと泣くアカギが何を思っているのか、傀に判るはずもない。
――― 間近で接した傀の、佇まいも雰囲気も、声も、とても美しくて、愛しい恋人を取られるんじゃないかという危機感で泣いているなんて、判ったらいっそエスパーだ。
「アカギさん…? どうしたんですか? …だいじょうぶ…ですか?」
「~…すみませ…、ん…」
ぐしぐしと、目元を腕で擦る。睫にはまだ水気が残って、透明感のある双眸も潤んでいる。
傀は思った。
可愛い…。
若くて、華があって、自分には無い明るい透明感がある。
「…ぁ、…」
安永さんが気に入っちゃったらどうしよう。と。
…先刻のアカギの気鬱も、ある意味無駄ではなかったのかもしれない。
駄目なところで、この2名は非常に似通った感性と思考の持ち主だった。
「……っ」
じわっ。
「…? 傀さん…?」
「っ、…あ、…どう、し…」
――先程までは辛うじて「むこうぶち 傀」の配役という仮面を被れていたのだけれど。パニくった傀から仮面が完全に剥がれ落ちた。
「~~っぅ、……」
今度はアカギが困惑した。
ほろほろと泣き出した傀は前髪で顔を隠して声を押し殺している。
困惑したままに、アカギはポケットからハンカチを取り出すと、傀の頬や目元を拭ってやった。
「――― アカギ君も傀君も、可愛いねえ」
ドアの隙間から見守っていた安岡の更に背後から、声。
「ごっ、ろう、じん」
にこりと、顎に指をあてたまま微笑む鷲巣巌。
軋む音をあげるぎこちなさで振り返った安岡は、振り返るんじゃなかったと後悔した。
肉食獣のオーラを感じる。というか、バックに 猛 禽 類 が 見 え る 。
自分はセーフティーゾーンに居ると分かっちゃいるが、ちょうこわい。
「…番組を楽しみにしていると、アカギ君に伝えておいて貰えるかな?」
「ハイ」
ヨロコンデー。
ふふ。うふふふー。とか笑いながら、肉食zy …鷲巣巌は立ち去った。
残されたのは、どっと疲れた安岡と、部屋の中の若人2名。
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鷲巣さんは受です。
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