いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.07.18,Sun
売り言葉に買い言葉で、「甘いひかえざ」を書くことに。
「甘いひかえざ」は、この微妙さがたまらんと思うのですよ。
「甘いひかえざ」は、この微妙さがたまらんと思うのですよ。
疲労感、ではなく、晴れない気分のときに携帯が鳴った。
さてどうしようかと考えはしながら通話ボタンを押せば、やはり、呼び出しで。行かなければならない義理も義務もなかったけれど、江崎はそこへ向かうことにした。
気晴らしにセックスしても良いし、それ意外であっても気分の転換にはなるだろう。日蔭は何かと面白い。見ていて、飽きがこない。
「今晩は」
ノックすると、入れと中から声が聞こえた。
扉を開いて入室すると、鍵は自動的に閉まる。その上からドアチェーンを掛ける。日蔭はなにも言わないけれど、多分この人は普段こうしているのだろうなあと、江崎はいつでも鍵の上にチェーンも掛けている。
「半端な時間ですネ。酒でも飲みにいきますか?」
「いや …なんだ?」
否定しかけた日蔭はネクタイを外した状態。スーツの上着は椅子の背に掛けられていた。白いスーツ。いつ見ても汚れの一つもなく、江崎は実は感心している。
あんな白一色のスーツを、常に汚れもなく着こなし続けるにはそこそこの配慮が必要だ。つまり日蔭はそういうことは出来るのだろう。
それはさておき、江崎が腕を伸ばして正面から首に両腕を絡めてきたので氷の男は驚いた、らしい。怪訝の目で眉間に皺を寄せていた。
「いえ、…行っても良いンですけど」
ああ、余程気分がくさくさしているのだと、江崎は思った。他人事のように。
「貴方に甘やかして欲しい気分でもあるんですよ」
「………、何」
驚きすぎて、言葉の最後に疑問符すら付け忘れている日蔭が面白くて、クスクスと笑う。
からかうなと殴られるだろうか、まあそれはそれで。等と考えていた江崎の頭に、日蔭の平たい手が乗せられた。
「 ? 」
何をするのだろう。
思考は頭ごと揺らぐ。
片手でなぎ倒される勢いでベッドに転がされた江崎は、背にスプリングを感じながら見下ろしてくる日蔭を見上げた。
いまの手には何も、敵意も悪意も怒りもなかった。なら、何故。
「疲れているなら、寝ていろ」
気持ち悪そうに言い捨てられた。
そんなに『らしく』ない言葉だっただろうか? 江崎は笑う。対応に困らせてしまったようだった。
寝転んだまま、スーツを脱いで、スラックスもその辺の床に放り投げる。
「何を…!」
「だって、寝てろって仰いましたもん。スーツのままじゃぁ窮屈ですよ」
「…~~」
「ね」
「勝手にしろ」
諦められて、白いシーツの上ですっかり全裸になった江崎は伸びをしながら口端で笑う。
江崎が笑っているのはいつものことなので、放置したまま日蔭はさっさとバスルームに消えてしまった。
「…つれないなァ、日蔭サン」
気分転換したかったんですけどー。と、小さく口の中に零れた言葉は、それよりも大きな欠伸にかき消された。
体は本当に疲れていたようで、日蔭が現れるまでにすっかり意識は睡魔に奪われてしまった。
ほぼ睡眠状態で浅い意識の中、バスルームのドアが開く音が聞こえて、人の気配がベッドに近付いてくるのが察せられた。
どうするのだろう?
瞼を上げる気はないままの江崎の頭、黒髪に指が軽く触れる。
数度だけ髪を絡めた指は、すぐに引っ込められた。
意外に思って続きを待ってみるけれど、ただ自分の横のベッドのスペースが沈んだだけだった。日蔭もベッドに横になったのだろう。肩が、横を向いて寝ている江崎の背に当たった。
そうして数十秒。
またも唐突に、江崎の肩口が掴まれ、引っくり返される。
「ぅあ?!」
頓狂な声が漏れた。
今度から日蔭のもとに現れるときは『天地無用』の宅配用のシールを貼っておこうと心に決める。引っくり返された江崎の頭が、固いものに当たった。
「いたっ」
「……」
流石に開けた視界の前、部屋の天井が目に入る。
真横に日蔭の体温がある、ということは。
「……あ」
日蔭は黙っている。江崎は気付いてしまった。
「はは、腕、痺れちゃいますよ?」
「寝てろ」
本当は笑い出したかったけれど、そうしたら日蔭は怒って、この面白い状況を自分から取り上げてしまうかもしれない。
だから江崎は腹を震わせて静かに笑うに止めた。
腕枕、なんて、まるで恋人同士のようだ。
この人は本当に面白い。
すっかり気分の晴れた江崎は、口元には笑みを湛えたままに瞼を伏せた。
おやすみなさいと、恋人がするように静かに甘く呟いてから。
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