いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2008.09.20,Sat
ブログで言ってたネタ
女帝ネタ。
にょた化お嫌いな方は見ないでくだしあ。
注意:エロではありません
…っていうかこれあるポイントを覗けば別に帝王鷲巣様でもいける(またか
鈍痛を抱えたまま、女帝はそれはそれは計算され尽した微笑を湛えた。
今年で齢50に手が届く女帝は、自分の造詣がどのようなものであるか、よくわかっている。
一般的には『美人』と評価される風貌ではない。
その造詣の中、一番のポイントになるのは双眸。猫の目のようだとはよく言われる。ツリ気味の、大きな目。
それを細めて笑うと、女帝の持つ雰囲気というものと相まって人外じみた艶が出るのを知っていた。
にこやかに、だが、媚びず。むしろ底知れぬ威圧を込めて。
「(それにしても)」
シャンパングラスを片手、ヒールを履いて、スリットの入った黒いドレス。大きく開いた胸元、白い肌の上には銀細工が施された紅玉のネックレス。
「(空調が酷い)」
晩夏だというのに、凍えそうな冷房。
パーティーの参加者は、男性が多い。政財界のパーティーなのだから当然だ。だからなのか、今日の会場の空調は酷いものだった。寒くて仕方が無い。
鳥肌を晒すなどという無様な真似は、女帝のプライドが許さない。一分の隙も無く気を張って、なんとか肌の表面は滑らかに整えている。
タイミングが悪いことに滅多にこないメンスの日であり、冷えるのは本当に辛い。
不定期に訪れる女帝のソレは、不定期ゆえに1度訪れると内蔵が捩れるほどの痛みを伴う。だからといって、どうしようもない。薬を飲んで対処するか、温めるしかないのだ。
しかし今回は酒も入るので薬は飲めず、かといってドレスでは保温にも限度があり…おかげで、ぎりぎりと痛む下腹を何時間も抱え、立ち続けなければならない事態に。
いま、にこやかに談笑している目の前の政治家の着込んだブランド物のスーツに、手に持っているシャンパンをぶっ掛けられたら少しは気分も晴れるだろうにと、女帝は不穏に目を細めた。
「御前」
「…、これはこれは」
不快な気分のときに不快な相手に声を掛けられ、女帝は唇を歪めた笑みを作った。
「久し振りじゃな、兵藤の」
にこやかに(にやにやと)挨拶をしてくる、帝愛社長。兵藤和尊。女帝よりは随分年も下。しかし経済界の新星とも呼ばれている。
数年前に何処だったかの夜会で出会い、以来、どうにも気に入られている。女帝は、嫌っているのだが。
「一曲お相手いただけますか?」
手を差し出され、女帝はしかし優雅に、手袋に包まれた手を、置いた。
心中は罵詈雑言である。
タイミングが悪いだの、そもそも誘うなだの、近い離れろ、だの。
しかし帝愛は成長企業。兵藤和尊個人は心底忌み嫌っているが、帝愛という企業はまた別だ。
何度かターンを繰り返し、曲にあわせてステップを踏む。リードが完璧なのも気に喰わない。
「…このまま…」
「 ? 」
耳元で囁かれ、危うく、抑えてた鳥肌を全開にするところだった女帝。ところが兵藤は、曲に合わせたまま優雅に、女帝をテラスへと導き出した。ダンスの音が遠くなる。
「…なんじゃ、本当は私(わたくし)と月見でもしたかったというつもりか?」
2人だけのテラス、手摺に軽く腰掛けて兵藤を見上げる。
「ええ、実は」
にこりと(にやりと)、蛇のような笑みを向けられた。女帝も笑みを、返す。
そこだけ切り取ってみれば、まるで御伽噺の1シーンのようだった。バケモノと契約を交わす魔女、というような。
「中は、あれは冷え過ぎですからね。此処で月でも眺めている方が良い」
「…また、似合わん台詞だ」
体調不良を見透かされていた。
不快感に、女帝は遠慮もせずに舌打ちする。この男が相手なら、構わない。気にする男ではない。むしろ、喜ぶだろう。女帝がこの男を嫌う理由はその辺りにあった。
とにかく、女帝の感情を乱して、害して、喜ぶのだ。好かれたいなどとは微塵も思っていないらしい。常に何事にも心を動かさない、闇の女帝が、自分の言動にどういう意味であれ揺らされるのに愉悦を感じるようなのだ。
拒絶しても喜ぶ、蔑んでも同じ。
平静でいるのが一番なのだが、己が感情をこの男の為にコントロールするのかと思うと、それもまた不愉快だった。結局、それしかないとしても。
女帝は息を吐き、テラスのテーブルに用意されていた水の入ったグラスを手に取った。
「いらぬ気を遣いよる。小賢しい男は好かん」
兵藤は、月を背に哂った。
「貴女の血の匂いが魅惑的で、つい我慢できず」
女帝は、くつ、と喉で小さく笑い
手にしたグラスに入っていた水を、勢い良く兵藤に浴びせかけた。
「無礼者」
無表情に言い放ち、グラスを床へ投げ捨てる。
派手な音がしてグラスは砕け散り、その音に、人が集まってくる。
人垣を視線で真っ二つに割り開き、女帝はテラスを後にする。
「あの愚か者をなんとかせい。あのままでは見苦しくてかなわぬわ」
1人の、男性客の目を見て命じる。男は給仕からナプキンを奪うと、慌ててテラスへ出て行った。
背後から、男と兵藤の会話が聞こえてくる。女帝は構わず会場を突っ切り、そのまま社交場から退場。そもそも、女帝の気性の激しさと気紛れぶりはこの世界では有名も有名、常識レベル。
そんな女帝から水を浴びせられた所で、兵藤が失笑を買うことなど、まず無いだろう。どちらかといえば、同情を買えるはずだ。
そして女帝が故意に目を合わせて命じた男は、ある企業のトップであった。帝愛が、パイプを繋げたいと触手を広げている界隈の、企業の。
会場では男は兵藤からさり気無く逃げ回っているようだったが、これで会話の糸口は出来たろう。後は知ったことではない。兵藤の手腕次第。
この場から去る口実を寄越した、その借りは返した。
車の後部座席に乗り込んだ女帝は、腕を組み、真っ直ぐ前を見据える。
「出せ」
「はっ!」
まったく今日は気分の悪い日だ。
夜を睨みながら、短く鼻息を零す。
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