いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.06.13,Sun
むこうぶちSS
華僑組と、もう1人。 軽く腐要素。
華僑組と、もう1人。 軽く腐要素。
使われている「事務所」の1つ。
事務所とは名ばかり、普段は誰かがそこに居るわけではない、そこに後堂が足を向けたのは、先日そこに入ったとき、観葉植物が哀れなまでに枯れていたのを思い出したからだ。
あれはあのまま腐り落ちたのか。もしそうなら、ごみとして出しておかないと虫も沸いてしまう。
そうでなければ一応水だけ遣っておこう。ただそれだけの気持ちからだった。
ドアを開ける。
まだ朝陽が眩しい時間帯。誰もいないだろうと思っていたそこに、ヒトの気配。
「……何方、ですか?」
後堂は、まだ組織の中であまり顔を覚えられていない。一応見せ掛けようの名刺は与えられてはいたけれど、面識の無い相手が中にいるなら面倒だなと思いながら、入室する。
「…」
人の気配はするが、返答は無し。
これはと後堂が警戒しながら視線を室内へめぐらせれば、ボロボロの黒髪長髪中年がソファーの上で転がっていた。
「江崎!」
何があったのか、いつもなら曲がりなりにもきちんと着られているスーツはぐしゃぐしゃで、ワイシャツの前のボタンは殆ど失われていた。
顔には、殴られたのだろう痣と、そのときに出来たのだか擦り傷が。
「…後堂サン?」
瞼の上まで腫れている。
久しぶりに敬称をつけて呼ばわれて、反射的に後堂は江崎の転がるソファーへと駆け寄った。頭を打っているのかもしれないと思ったからだ。
一応の「上司と部下」という間柄になってからは、江崎は決して後堂に敬称を付けはしなかった。
いつもは意識的にしていることが、出来ていない。
「そうです、私です。…分かりますか?」
顔を覗き込めば、江崎は口端をゆるりと上げる。
「……、ドラッグストアに行って来ます」
先程前を通りかかったとき、開店準備をしていた筈だ。
江崎は病院には担ぎ込めない。少なくとも、後堂がいま知っている病院のどれにも担ぎ込めない。
「スミマセン、そのまえに、水…飲みたいです」
掠れた声で訴えられ、周囲を見回す。
水道は通っていたはずだが、すぐ使えるのかは分からない。キッチンの蛇口を回してみれば、暫く色のついた水が流れてから透明の液体が勢いよく流れ出した。
が、生憎コップは存在しない。
眉を顰めた後堂は、今度から紙コップくらい常備しておこうと考えながら自分のハンカチを取り出して水を含ませる。
「容器がなかったので…これで」
水をたっぷり吸ってふやふやとした手触りのハンカチを江崎の口元に宛がえば、素直にそれに吸い付いている。
「ゲホッ」
むせて、吐き出された水は薄赤く、口腔も傷ついていることが察せられた。
ひとしきり水を口に含んで落ち着いたのか、江崎の、片方は腫れた瞼が持ち上げられた。
「切り傷用の軟膏、お願いします。粘膜が切れてしまいました」
「それも当然買って来ますから、大人しく寝ていてください」
「…いえ、そうじゃなくて」
髪をかき上げた江崎が笑う。
手首に見えたのは、傷口。――歯型、の。
「下用の。あ、大丈夫ですヨ、心配しなくても。自分で塗りますから」
「……~」
いいから、大人しくしていなさい。
低く一喝した後堂は、財布を確認してから急いで部屋から飛び出した。
そういえば、ボロボロのスーツのスラックス、そこにベルトが存在していなかった。部屋に沈んでいたのは、泥と汗と、恐らく体液の、臭い。
それに傷を伺えば、同意の上の行為でなさそうのなのは明らかだった。
それでも江崎は笑っていた。なんでもないことなのだろう。”だから”そんなになるまで痛めつけられたのだろうと、後堂は推測する。
服従させようと、侮辱しようと思った相手がいつまでも、恐怖も憤怒も嫌悪も見せずに笑っていたら、腹立たしくて仕様が無かったことだろう。
「…解っていて笑ったのでしょうがね、あの男は」
まったく何故こんなことに巻き込まれなければならないのかと、買い物籠にマキロンやオロナインを放り込みながら後堂は眉を顰めた。
気の毒なのは、江崎なのか、その相手なのか、判別付けがたいなと考えながら。
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相手は勿論というか日蔭さん。これが初めて。
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