いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2010.06.17,Thu
むこうぶちSS
江崎さんと後堂さん。あと可哀想な誰か。
江崎さんと後堂さん。あと可哀想な誰か。
「――あ、少し待っていて下さいね」
「はい?」
唐突に、何を。
そうは思っても、江崎は既に歩き出していた。
此処はベイシェラトン・ホテル、ロビー。
中にあるレストランのランチバイキングが美味しいんですよと、江崎にゴリ押しされて連れて来られた。
指名手配犯が何を言ってるんですか私と貴方じゃ目立ち過ぎて、などと何とか逃れる口実を作ろうとはしたのだけれど、江崎は髭まで剃って鬱陶しい長髪は軽く結わえ、似非エリート風情で決めてまで此処へ来たがったので、もういっそ半ば同情で同行してしまった。
…ランチバイキングのデザートが、美味なのだという。
もう勝手にして下さいと後堂は思った。
先日江崎が受けた怪我もほとんど治り、顔の湿布も剥がれている。
見てくれは問題は無いだろう。髭も剃ってこざっぱりしてくれたなら、サラリーマン同士の昼食ついでの打ち合わせに…見えなくも…ない…(と思いたい)。
歩き出した江崎が向かったのは、ロビーのラウンジ。
ラウンジでコーヒーを飲んでいた男が支払いを終え、数歩歩き出したところ。
「お久しぶりです」
「……!」
ギョッとした顔を、される。
江崎は構わず、常の笑みを浮かべたままに、スーツの内ポケットを探ると取り出したものをそっと男へ差し出した。
「いえね、気になっていたんですヨ、貴方どうやらコレを持ち歩いてはおられないようでしたので…」
ぺそん。
反射で手を出してしまった男の、掌の上に乗せられたのは
こんどーむ。
「なっ」
「誤解しないで下さい、なにも貴方が病気を持っておられるだなんて思ってません。でもね、本来そういう場所ではありませんから、貴方の健康の為にも、次回からはちゃんと着けておくことをお勧めしたくって」
「………」
「極薄タイプで匂いもしませんから、使い勝手も良いですよ。…あ、いえいえ、決して私に使って欲しいわけではなく、お好きな時に使って下さいね。単に私のお節介ですので」
ねっ。
ニコッ。
ガッ。
「痛っ」
ぬるぽ。
ガッ。
の勢いで殴りつけられる。
「ふざけるなっ…!! どういうつもりだ…貴様、俺を侮辱するのも大概にしておけ…っ」
怒りに任せて江崎を殴り飛ばした日蔭は、顔を真っ赤にさせてスーツケースを転がして早足でロビーを出て行ってしまった。
残された江崎は、叩き返されたゴムをポケットに仕舞い込んで、肩を竦める。
「…ふざけたつもりは無いんですがねェ」
結構大事なことですよ?
うーん。と、困ったような顔をしながら戻ってきた江崎に後堂は眉を顰めた。
「…会話はまったく聞こえていませんでしたが」
「はい?」
「全面的に貴方が悪いのだと思います」
「えぇ?!」
酷いなあ。
笑う江崎を促して、浴びた注目を引き剥がす為にエレベーターに押し込んだ。
ランチバイキングは江崎の奢りというのだから、それをしっかり食べることにのみ意識を持っていこう。そう思いながら。
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江崎さんは「余計な親切」の達人です。
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