手を引いて

フルメタルアルケミストＳＳ
マイルズキンブリ風味。

――――お迎えに上がりました。


久しぶりに聞いた声。
特徴的な、高いような低いような、決して好感は持てない音の響きを持った、声。

『キンブリー…！？』

――――おや、私を覚えておいででしたか。これは意外。

『覚えても、なにも。…なんだ、此処はなんだ』

――――…”お迎えに上がりました”と言ったでしょう。ボケたんですか貴方。


遥か昔されたように揶揄されて、気付く。
そうだ、己は、もう。


――――流石、イシュヴァール人はしぶといですね。私、随分待ちました。

『待てと言った覚えはないな』

なじられて気分が良いわけがない。
憮然と返してから、気付く。待っていたと、いったのか。

『……何十年経ったと思ってる。さっさと逝けば良いものを』

この冷たい暗い、何も無い場所。
ずっと此処に居られたなら、やはりこの男は狂人なのだ。
冷たさも孤独も我関せずと、例の白いスーツ姿で以前の通りに。

――――…ククク、貴方、本当に面白い方です。泣くなら迎えに来た私の方だと思うのですが？

『煩い。”待って”いたんだろう。さっさといくぞ』

さっさと来いと、手を伸ばす。
紅蓮の錬金術師は、己の白い手袋を見下ろし、蛇のように僅かに口端を上げてから、そのまま細い手を差し出した。

『天邪鬼め』

耳障りな笑い声を漏らし、少し遅れた位置で歩き出す。



短くも長くも無い、細い黄泉路を。







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キンブリーはプライドの中で消滅。
最終決戦が終わってから、マイルズさんは普通に寿命を全うして
（その間に子供できたり家族増えたり色々普通の幸せもあって）
死んでからの再会。みたいな。

気紛れでマイルズさんを待ってみたキンブリーと
気紛れで何十年もたった一人で暗闇に立っていられた「異常」なキンブリーがどうしても悲しいマイルズさん。たぶん肉体関係があった。