忍者ブログ
いわゆる裏的な
[542] [541] [540] [539] [538] [537] [536] [535] [534] [533] [532
Posted by - 2024.11.01,Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by 瑞肴 - 2011.02.09,Wed
EZAKI

自分の中で江崎とEZAKIがちょっと腑に落ちてきたので、EZAKI SSです。

 
 
 



使われていない会議室の中から聞こえる喧騒に、足を止める。
ドアの外に立っていた男に改めて確認してみると、室内で簡単な審査が行われているのだという。審査。まあ名付けるなら審査か。大方の予測はついた。
先日、劉大人が拾い上げた日本人だろうか。わざわざ審査を受けるような人間は限られている。
三年半、船の上に居たという。
生き延びたのも珍しいが、陸に上がって『此処』に居座ろうとする根性も珍しい。余程の胆力を持っているのか。矮小な国の卑小な人種が。
僅かの興味を持ってドアを開ける。
中の者たちは彼の登場に少し驚いたようだが、立場に天と地も差があるので咎める者はいなかった。

部屋の中央には、数名に囲まれてサンドバックになっている男。

一瞬、殴られ蹴られながら笑っているのかと思ったがそうではない。単に目が細すぎて笑顔に見えるだけだった。口元は苦痛に、薄く開いている。既に両足で直立するのも覚束ない状態だった。
時々、反撃にみえる仕草もするのだが、あっさりと封じ込められて叩き潰される。これでは戦闘要員にはなりえないだろう。
我武者羅に反撃するでもなく、ヨロヨロと弄ばれている男に興味も持てない。観察を止めて次の仕事について考えていると、数分経って気がついた。
これは。
「おい」
「は、はあ? どうかしましたか?」
「一発だけいれさせろ。私も試してみたい」
「蔡さんがですか?!」
蔡は、劉商会の実戦部隊の一員。悪戯に力を誇示することはない男の珍しい申し出に、日本人を囲っていた男たちはそそくさと場を譲る。
「………?」
ゆらゆらと、既に腰も据わっていない男が細い目を蔡へと向けた。腫れあがっているので余計に両目が細まって見える。
「安心しろ、私はプロだ。下手な後遺症が残る殴り方はしない」
日本人は、笑った。
そうだ、確かに笑った。
蔡は己の目が恐らく間違っていなかったことを確認する。
繰り出した右腕からの一撃に、日本人は呆気なく床に転がり失神した。


ソファーに寝かされた男が目を覚ましたのは、額に冷たい濡れタオルが乗せられたからだ。
「痛っ…」
酷いもので、打撲あとが痛み体中が火のように熱い。腕の1本も持ち上げられず苦笑した男を覗き込んだ顔があった。
「…サイ、さん、でしたか」
「ああ、よく覚えているな」
ふふふ。男は笑った。私、頭脳労働者ですから。そう言って。
「大した嘘吐きだな」
「はい?」
空惚ける縁起も中々だ。首を捻って視線を合わせることすら出来ないほど痛めつけられて、まだ平然と嘘を吐く。
「弱い演技がしたいなら、殴られるとき少しは体を緊張させることだ」
「………」
「体の力を抜いた状態で攻撃を受ければ、力は受け流されてダメージは結果的に減る。だがそれは理屈であって、解っていてもそうそう素人が出来ることではない。恐怖に、必ず体が強張るからな」
「……」
「貴様は多数に囲まれているときも、私がプロだと前置きした後ですら、体にまったく力を入れなかった。…嘘は吐けても演技は下手らしい」
日本人は、また笑った。地顔なのかもしれない。
打たれた腹が痛むだろうに、腹筋を震わせてクスクスと面白そうに笑い続けた。
「勉強になりました、次回があれば気を付けましょう。――次など御免被りたいものですが」
うふふふふ、すごい、そんなこと、見てわかるんですネ。参りました。
感心と賛辞を込めて掠れた声で呟く男が、案外若いことに気付く。ヒゲと長髪に隠れてはいるが、まだ三十代かそこらだろう。
「劉大人に報告しました?」
「…いや」
この男は、実戦部隊に関わるのは御免なのだろう。本人の申し出通り、頭脳労働がしたいのだろう。ならば報告は男の願いのアダになる。
「報告はしていない。…代わりに、ではないが、ひとつ申請をしてきた」
「 ? 」
「あの日本人の矛になりたい、と」
男の細い目が見開かれた。
日本人らしからぬ明るい鳶色。
「劉大人は許可を下さった」
「……ふふ、はははははっ!! 貴方、面白い方ですねぇ」
ひとしきりウケた男だが、笑いすぎて咽たようだ。げほげほと苦しそうに身悶えるのを黙って見、収まったころに口を開く。
「―――私、江崎、と申します」
「ああ」
「以後、宜しくお願いしますネ。蔡」
ひどくゆっくりと持ち上げられた手を握ると、江崎は痛みに眉を顰める。
やはり、その口元は笑んでいたのだけれど。
 

拍手[6回]

PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新コメント
[01/18 スーパーコピー バッグ 口コミ]
[01/16 スーパーコピーブランド財布N級品]
[11/06 シャネルスーパーコピー]
[10/20 ブランドバッグ・ブランド財布N級品販売通販]
[02/11 瑞肴]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
瑞肴
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]