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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2009.11.09,Mon



娼館De俳優パロ

ベタを目指すゆえに今回もエロはありません
(前回更新時「エロは?!エロが無いよ?!」と言われたので一応注釈)
なんかもどかしい感じ。

 










アカギは人見知りではなかったけれど、決して饒舌なタイプでもない。
隣に座ったは良いものの、話し相手になどなれるのかという危惧に襲われたが、それはただの気鬱に終わった。老人はひとの言葉を引っ張り出すのにとても長けていて、その上それを相手に不快に感じさせない。
最初は無難な、祖父が孫に聞くような、学校では何を習っているのだとか、いまの大学というのはどういった雰囲気なのかだとかいう会話から、すっかり日常での会話に移行していた。
「いまの学生さんも、麻雀だとかをするんだね」
「流行ってますよ。…大概、やっているのは男子学生ですけど」
「それは私の時代からそうだったよ」
くふくふと笑う。
この老人が学生だった時分というのだから、結構な昔の話だろう。その時代に大学に通っていたというのだから、裕福な家庭で育ったのか、それとも余程運が良いのか。
「君も、打てるのかい?」
「ええ、まあ。…でも、まだまだ初心者だから下手なんです」
そう、と返した老人は、じぃっとアカギを見上げてくる。
少し、どきりとする。どうにもこの老人は浮世離れした存在感で、猫のような目も、彫りの深い顔立ちも、外国の御伽噺にでも出てきそうな鷲鼻も血色の良くはない肌も、背後の風景から浮き上がるように視界に飛び込んでくる。
「…あの」
そういえば、まだこの老人の名前を聞いていない。それに自分も名乗っていない。”こういう”場で聞くようなことではないのかもしれないが、それでもこの人の名を聞いておきたくなった。
「俺、赤木しげると言います。…貴方のお名前を聞いても――


「鷲巣様!!」


館から、低い、そこそこの声量が二人の方へと投げかけられた。
「……ああ、見つかってしまった」
悪気なく老人が笑っている。
岩から腰を上げ、数歩歩き出す。
アカギは見守るままだ。あれだけ強く呼んだということは、探していたのか用があるのか、どちらかだろう。いままで老人の名前すら知らなかったアカギに、引き止められる強制力はない。
「御免ね? 私はもう行かなくては。 たくさんお話してくれて有り難う、アカギ君」
「あ、…はい、……いえ…」
仕方ないが、もう居なくなってしまうのか。まだもう少し、話していたかった気がするのに。
老人の枯れた指が、アカギの前髪を掬った。さらさらと落ちる。
「鷲巣巌、…私の名前だよ。 ね、アカギ君、とても楽しかったから、また逢いに来てくれるかい?」
頷く仕草に老人が嬉しそうに笑えば、また、館から声が掛けられる。
今度こそアカギに背を向けた老人は、じゃあ、と最後に残し、急くでもない速度で館へと歩いていった。


取り残されたアカギは空気にわずかに残る香りが何であるか考えに考え抜いて、やっとそれが、老人のつけていた香水の香りだという答にいきついた。
仄かな薔薇の、香り。

 

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