今回は、しげる×女帝です。前のの続き。
二人称っつーか三人称は、相手に合わせて変えたのですよ、という無意味なねたばれ。
だから、平山さん視点で書くと「彼女」。
お兄さん視点で書くと「女」もしくは「妹」。
…幸雄さんはねえ、あんなことされてんのに「彼女」という呼称を使うんですよねえ。
「悪魔」とか「老女」とか「淫売」とかでもよかろうにねえ。
ほどよく毒が回ってきてるのだろうな。
さておき、以下からはじまりまーす。
今更。
女帝にとって、それはまったく今更のモノであり、到底、素直に受けいれられるようなモノではなかった。
誰もが目を逸らした。
誰もが、手に入るわけがないと勝手に距離を置いた。
畏怖し、崇め、蔑み、盲信し、誰も”此処”まで上がってこなかった。かろうじて同じ場に立ったのは、あの蛇のようなサディストだけだったが、それは女帝を屈服させ嬲りたいが為だけで。
「ぅ゛、あ……」
嫌、だ。
拒絶しなければ、これを受け入れてしまう。
この国の、王で、なければ、しかし、己はもう、金も、なにもかも、この身ですら、今は己のものではなく、では、なにに、なにを礎とすれば、良いのだ。
「ぁ゛ああああ゛あっ……っ!!」
返せ。
強烈に、女帝は願った。
金。ではない。
アカギが己を奪ったと、女帝はそう認識した。
「…余計な、ことを…っ! …私(わたくし)はこの国の王…、支配者…っ…、貴様などに、そのような目で見られる所以は無い…っっ!!」
髪を引っ張られても顔を引っ掻かれても、アカギは退かず。
「金と肉では足りぬのか…っ?! この上、私から何を奪う…!! 悪魔…っ、外道…! …なにも、無い…っ もう私にはなにもない…!」
「……」
アカギの掌が頬に添えられる。親指の腹が涙を拭うが、構わず、女帝は眼前の男を睨みつけている。
「鷲巣」
「……っ」
「俺がアンタから与えられたのは、金と体だけだ」
「…!!」
アカギの、真っ直ぐな目が物語る。
「…そ、……っ れは…」
認めたなと。
「…ちが、違う、…違う…」
なにもないと、口走った。
心すらアカギが奪ったのだと、だからもう己には”なにもない”のだと。
「………違う…っ、…わた、くし、は…ッ」
激情のままに、なにを口走ったか、アカギの視線で理解した女帝は見る間に顔色を無くし蒼白になっていく。
「…ぅ、あ…」
肉の陵辱など幾らでも耐えてみせる。実際、この一週間女帝はそうやって生きてきた。しかし、心は。
それを犯される痛みだけは、我慢できず、故に女帝は女帝で在り続けた。
浅く短い呼吸を繰り返す女帝の体を、改めて抱きとめたアカギが静かに息を吐いた。
「何も無いってこともないんだがな」
「………?」
なんだ、この体は本当にあたたかかったのか。
見当違いなことを思いながら、女帝は男の声に聞き入った。
「アンタは俺を持ってる」
「……ぁ゛?」
「クク…判らねぇのか? 鷲巣依和緒。俺はアンタのモノだと言っている。…アンタは俺のモンだけどな」
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