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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2010.12.05,Sun
むこうぶち妖怪パラレル。
蛾とわんこ。

業務用○○○○は実際に存在します。








「日蔭サン」
「・・・・・・・・・・・・・・、なんだ」

新聞に集中していたので、声をかけられたのに反応するのに時間がかかった。
江崎は気にする風ではなく、風呂上りの、腰に巻きつけた一枚と頭に被った一枚と、合計二枚タオルという出で立ちで日蔭を見下ろしている。

「けも耳がお好きだったなんて知りませんでした」
「はあ?!」

ピ。

江崎の指がテレビ画面を指す。
深夜アニメが流されていたそこには、ねこみみやらうさみみを揺らした少女たちが、際どい衣装でなにか、敵と、戦っている。

「観とらんわ!! つけっ放しになっていただけだっ」
「おや、そうでしたか」

わかっているくせに、そういうことを言う。
江崎の口から出る言葉は戯言ばかりだ。

「お好きでしたなら――こういう趣向もご用意できますよ、私」

ピコン。

黒い長髪、生える耳。
狗の形態になったときの江崎の、犬の耳が、人間の形をとっている江崎の頭に生えていた。
ぴこぴこと、器用に耳を動かしながら、日蔭の座る椅子の横に据えてあるベッドに腰を下ろす。

「可愛くないですか?」

日蔭は
割と、真っ当な感性の持ち主だった。

「可愛いと思える要素が無いな」

髭の、長髪の、そこそこにガタイも良い、中年(男性)に
犬耳というオプションをつけたところで、それでどうしろというのかと日蔭は思った。

「仕方ありませんね、これもつけましょうか」

いや、もういい…。

が、既に江崎は尾骨のあたりから、黒い毛の長い尻尾を揺らしていた。
ゆらんぱたん。

「俺にどうしろというんだ貴様は」
「触っていいんですヨ」
「………ああ」

もう、脱力しきった手で、投げ遣りに江崎の頭を撫でてやる。
手に触れるのは、人の髪と、獣の毛。

シャンプーと、石鹸と、どれだけ洗っても落ちない血の臭いが鼻に届いた。

「機嫌が良いな」
「ふふ、わかりますか」

わからいでか。

江崎が無闇に、嫌がる日蔭に構われたがる時は、大抵機嫌の良いときだ。大概屈折した狗の嗜好に呆れながら、手を離す。

「バレンタインに貴方に頂いた麦チョコを食べている時に、面白い方に出会いました」
「ドンキに呼びつけてわざわざ買わせた業務用のアレか」
「アレですね」

業務用麦チョコってなんだ、と思った覚えがある。

「いまは休養中なので連れていませんが、面白い素材なので少し育ててみようかと思ってるンです」
「…ふん」

珍しいこともあるものだ。
上機嫌に揺れている尾を眺め、日蔭は鼻息をひとつ飛ばした。

どうせ、ソレは新しい血臭を呼び込むだけだろう。

「後堂、という方でして」
「興味無い」

名も知らぬ妖よりはまだ、犬耳を生やして尾を揺らす中年のほうが興が沸く。

憮然と零せば江崎はにこやかな笑みを浮べた。



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