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いわゆる裏的な
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Posted by - 2024.11.01,Fri
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Posted by 瑞肴 - 2010.06.25,Fri
前回の続き、むこうぶちSS
華僑組と確実に可哀想な氷の男。










「大哥(ターガァ)、アイツじゃないですか?」
「 ? 」

後部座席から、運転席の陳が示した方を、見遣る。

「…? 私は用はありませんよ」

見遣って確認した上で、ハテと首を傾げた兄貴分を、酷いモンだと思いながら、付け加え。

「スーツがトランクに入ったままです」
「…。ああ! そうでした」

一寸渡して来ますと、江崎はさっさと車を降りた。
日本人らしくソツ無い緻密な仕事ぶりと、それと相反する柔軟さを持ち合わせた希少な上司ではあるが、基本 酷い のが偶に傷だ。
陳は息を吐くと座席のシートに背を埋めた。






「日蔭さん!」

声を掛けると振り返った日蔭は、見る間に表情を強張らせていった。というか、額に薄っすらと血管を浮かび上がらせていく。

「江崎… 貴様よくも抜けぬけと俺の前に顔を出せたな…」

暫く前、江崎の無言の偽証のおかげで銃口を向けられた日蔭の怒りや、いかに。

「悪いことをしたと思っていたんですよ。幾ら実弾入りの銃を向けられて動転してしまったとはいえ、貴方のことは弁明すべきでした」

済みませんでした。
言いながら、上質の白い紙袋を差し出される。

「…なんだ、これは」
「貴方の上着です。部屋に忘れていかれたでしょう? せめてのお詫びにクリーニング済みです」

あの後、後堂に茶を入れて貰っている間にふと気付いたのだ。
日蔭が忘れていったスーツの上着。
どれと手にとってポケットを探れば携帯電話や小銭入れが出てきたので、そのまま部下に押し付けたらクリーニングされて上着が戻ってきていた、というわけ。
別に江崎が積極的にどうこうしたわけではない。

大哥これどうしましょうと問われたので、いずれ会うこともあるだろうと車のトランクに放り込ませたのだ。江崎、これを数分前に思い出す。

「……」

顰め面ではあったが、日蔭はそれは取り合えず受け取った。

「これで許したと思うな」
「ええ勿論」

頷き、笑みを浮かべたままの江崎が腹立たしい。
薄暗くなってきた路上。一発殴ってやろうかと拳を握り締めたところで、聞き覚えのある声が眼前のスマイル・マンを呼び止める。

「江崎?」
「―― 後堂」
「っその男は…!」


あー。
バレました、か。

江崎は痛恨の表情で、ぺちりと己が額を叩いた。










三者はファミレスの隅の一席に陣取っていた。

「…ということは、私は勘違いをして…? ……~~っ!!」

脳裏に当時の再現フィルムが勝手に流れ、後堂は額が真っ赤になるほどの羞恥に襲われて両手で顔を覆いテーブルに肘をついた。

「後堂… ………サン」
「今更敬称をつけないで下さいッ!! まったく何なんですか貴方は! 私に怒られたくなかったからって、どうしてそんな事で嘘を吐くんですかっ!!」

小声で怒鳴るという器用なことをする後堂に対して、シトラスカクテルパルフェを着実に減らしていっていた江崎は、真摯な態度でスプーンを置いた。

「貴方に怒られると、行動を改めなくちゃなあと思うんですよ。でも私、人に言われて行動を改めるの嫌いなンです」
「子供ですかっ!! というかそれは唯の性質の悪い大人ですよね?!」

ガチャンと、コーヒーソーサーにカップが乱暴に下ろされた。

「そんなことより、俺への謝罪が先じゃないのか?」

茹だk …否、薄ら赤かった後堂の表情が、スッと落ち着く。

「貴方が江崎に『一方的に暴力を振るっていた』のに変わりはありません。私は勿論…江崎も、貴方に謝罪する義理などありませんよ」

ピシャリ。

後堂の線引きは厳しい。他人と、勿論自分にも。
揺らぎも弱味もまったく存在しない視線に晒されて、日蔭は不快げに顔を顰めてそれを睨みつけた。

暫し、間。

「まあまあ、後堂、誤解も解けたことですし、貴方に事実関係を説明しなかった私も悪いですから、初対面からそういがみ合うことはありませんよ」
「いがみ合っているように見えるなら、それは貴方の所為です」
「はい」

「日蔭サンも、ご迷惑かけて申し訳ない。また日を改めてお話させて頂けますか?」
「そこの男がしゃしゃり出て来ないのならな」
「はい」

三方一両損。
…否、ちょっと違う。
違うが一応頷いた両者に、江崎はよかったよかったと改めてスプーンを手に取った。

「まだ食うのか! 空気を読め!!」
「…江崎は甘いものが好きなんです。そんなことも知らないのに体の関係だけあるんですか?」

割り込むまい、もう割り込むまい、これは己の範疇外。
かちゃかちゃと江崎はスプーンを躍らせる。

針のムシロは江崎というより、後ろの席で待機させられている陳だろう。

都内のファミレスの一角、平和なのか何なのか判らない光景が繰り広げられている。


 
 


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