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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2008.06.07,Sat

 

 

帝愛スキーな方は・・・

モーリス・ルブランの書いたルパンVSホームズを読むホームズファンくらいの寛容な心で読んで頂けませんか…

おねがいします・・おねがいします・・・会長も私なりに愛しているので許してください・・・。

今回でおわり。もっそい不安なのでかんそうとかもらえたらきょうきらんぶ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一時が万事そんな調子だ。吉岡も鈴木も、2日目の昼には当主が人間であるという大前提の認識を捨てた。多分、鷲巣はもっとずっと前から捨てている。
鷲巣は此処に来てから、当主が何をしても、何を言っても、不快感は見せるが席は立たない。そういう約束なのだろう。もてなし自体は最上級のものだったが、所々、アクセントのように散らばる当主の振る舞いは明らかに意図的に鷲巣の神経を逆撫でするものだったというのに。
しかし中でも、鈴木が一番冷や汗をかいたのは昨日の一件だ。
カードゲームに興じていた当主と鷲巣を見守っていたとき、なんの不備か(故意か)特異な作りをしていたカードで鷲巣が指先に怪我を負った。自分が出す血液はとにかく嫌う鷲巣が『痛い!』と不機嫌に零したそのとき、何時の間に迫っていたのか、当主は鷲巣の手を取って傷付いた指先を舌先でねっとりと舐め上げた。鈴木には、そのとき鷲巣の顔面が嫌悪と怒りの余り白くなっていたのが見て取れたのだが、彼がそれに目敏く気付いたもうそのときには、2人の間に吉岡が割って入って、にこりと笑っていた。吉岡のあんな目は久しぶりに見た、後に鈴木はそう語る。『消毒しないといけませんね。鷲巣様、失礼致します』穏やかに、ごく穏やかに。サングラスの奥の目はまったく笑ってなどおらず、むしろ冷たい殺意を浮かべてすらいた。鷲巣が明確に拒絶の意思を滲ませていたからだ。
ハンカチに消毒用アルコールを含ませて、丁寧に鷲巣の怪我…否、指先を拭いていく。かろうじて、鷲巣の顔に血の気が戻る。当主は怒りをみせるでもなく笑っていたのだから、まったく狂っているとしかいいようがない。
不毛な10日間がようやく終わろうとしていた。
今晩さえ過ぎれば、明日の朝は帰るだけだ。だけ、だったのだが。
「……」
「……」
宛がわれた部屋。吉岡と鈴木、沈黙。
さっきまで、当主の私室で当主と鷲巣が酒を交わしていたのだが、当主の終わることない弁舌に、鷲巣が途中で2人に退室を言い渡したのだ。
表面だけ見れば、鷲巣が2人を気遣ったのだ、とも取れる。
2人ともが知っている。違う。鷲巣はそのように部下に気遣う主人ではない。つまりは、出て行けと、言われたのだ。この場から去ね、と。
気が気ではないとはこのことだった。離れに戻り、ともかく、風呂には入ったものの、眠れるものではない。そんなわけで2人して寝台に腰掛け、じぃと時間を過ごしている。
「…遅いな」
「…ああ」
時計は既に二時を指し。
結局その夜、鷲巣が戻ってくることはなかった。
当然ながら出来上がる隈をサングラスで覆い隠し、朝になって訪れた黒服に案内されて母屋へ向かう。鷲巣が、正面玄関に立っていた。顔色は特に、良くもなく悪くもなく。そもそも鷲巣は血色が悪いし隈が常態なのだが。
「鷲巣様」
「遅い」
「申し訳ございません」
鷲巣の出で立ちから察するに、このまま帰途に着く様子だ。車のエンジン音が聞こえてきて、鈴木が慌ててそちらへ向かった。朝食はとっていないがずっと鷲巣を待っていたので、胃の中はコーヒーで埋まっている。
「御前」
「…なんじゃ」
うんざりと鷲巣が返した。
「またのお越しをお待ちしております」
「もう来んわ」
当主の言葉が終わるか終わらないかのうちに。ふん、と鼻息を鳴らし、鷲巣が車へ向かう。見送りにとついてくる当主や黒服をうっとうしく思いながら、車のドアを開く。鷲巣はそこへ乗り込んで。
思い出したかのように、開いたままのドアから当主を見上げた。
「和尊」
「はい?」
杖を、伸ばす。取っ手部分で当主の襟首を引っ掛け、鷲巣は強引に当主を引き寄せた。
「貴様は結局一番欲しいものを取り逃しておる…」
「フ…言葉遊びですか?」
鷲巣は笑った。爽快に、しかし蛇のように笑っていた。当主の耳元へ、顔を近づけて。
「くはは…っ、わしは既にわしの物ではない…っ、でなければ誰が貴様のもとへなど来るものかっ…! そうまでして国内に留まろうとするものか…!! 残念だったな和尊…、誰の物でもない鷲巣巌は永劫貴様の手には入らんのだ…」
初めて、
顔色を変えた当主を、2人は見た。
一通り笑った鷲巣は当主を投げ遣りに解放し、冷たく命令を下す。
「閉めろ」
杖を引っ込め、同時に鈴木が流れる動作で後部座席のドアを閉める。急いで、助手席に乗り込むと、吉岡が既にアクセルを踏み込んでいた。
「出します」
「うむ」
最後の一矢は鷲巣にとって苦渋の選択だったのだろう、むっつりと黙り込んだその姿は、ふて腐れているという表現が至極似合っていた。
「…………………休むっ!!」
「はい」
僅かに赤い目元に安堵と、複雑な気持ちを混ぜて返事をかえす。

 

 


前へ進む為ならば、すべて、なにほどのことでもないのだ。
この身、存在すべては赤木しげるのものだとアカギは言い、己もそれを良しとした。それを貫く為ならば、すべて、なにほどのことでも、ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  完

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