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いわゆる裏的な
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Posted by - 2024.05.21,Tue
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Posted by 瑞肴 - 2010.01.06,Wed


もうなにがなんだかわからない












ぺきりと、音がする。
”また”だ。忌々しい。

だから、こんな忌々しいものを手元に置いておかなければならない。
鷲巣は眉間に深く皺を刻み、部屋の片隅に放置してある巨大な水晶…正確には、”水晶で四肢と首を固定した青年”へと視線を投げた。

「………ァ、…」

玉座。
そこから立ち上がり、薄い唇を何度も開け閉めする青年の前へと移動する。

「……泣か…ないで、…、…で、ください…」

か細い声が漏れ、帝王は鋭く舌打ちした。
馬鹿な。あれが泣くタマか。
青年は躊躇して手も足も出せなかった”恋人からの己への攻撃”をあっさりと受け流し、微笑みを湛えたままに其れを八つ裂きにしてみせたというのに。
幾ら其れがダミーだと解ってはいても、中々、秒の、コンマの躊躇もなく出来ることではない。
だからアレは”鷲巣巌”を名乗れるのだ。
まったく異質でありながら同質でもあるアレに苛立ちを覚えていた鷲巣が沈黙していると、青年を拘束している水晶がピシピシと細かな亀裂を走らせていった。

「…”鷲巣”さん、…? なかないで…、あなたの傍に、………います、いき、ます、」

そうして此れも、だから”赤木しげる”の名を持つ、のか。
この強固な意志の根源にあるものは何なのか。
認めたくない鷲巣は、まったく忌々しいにも程があるが最も適切かつ単純な処置を、今日も施すことになる。

ため息をひとつ、ついてから。

「……アカギ…、…………”くん”」

指先で、頬に触れる。

ほんのわずかな感触だろうに、それだけで”アカギ”は泣き出しそうな笑みを浮かべる。

「”鷲巣”さん」

「……此処に居る。赤木しげるの下に、この鷲巣巌は存在しておる。…何処にもいかん、わ…たしは、赤木しげるだけのもの…だ」

「……… ……」

暫くは目を開いていた青年も、鷲巣が黙って己の眼前に立ち続けていたのに安堵したのか、ゆるゆると瞼は下がっていった。
同時に、亀裂が入っていた水晶が修復していく。

すぐさま鷲巣は青年へと背を向けた。
青年は青年であり、あの狂人ではないのは十二分に承知してはいる。いるが、それが問題なのでは、ない。

鷲巣巌の真実がひとつであるように、赤木しげるの真実もまたひとつ。

「……アカギ」




だから己は、あれに打ち勝ち滅ぼし、屍を踏みにじり往かねばならない。

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