いわゆる裏的な
Posted by 瑞肴 - 2009.12.25,Fri
次の配達先は「あちら」だ。
子供は好きではないし、ガキは尚のこと好きでもない。
けれど鷲巣巌の職業はサンタクロースで、ならば己が職業…仕事はまっとうしなければ気がすまないのが鷲巣巌だった。
背負っていた大きな白い袋を、抱えなおす。
サンタの袋であるからして、重さは感じない。
「やっと終わりか」
やれやれといった風情で息を吐いた鷲巣は、次の配達先へと歩き出そうとした。
「鷲巣」
一歩。
出そうとしたところで呼び止められる。
「……なんじゃ、アカギ」
アカギは既に仕事を終えたのか、白い袋を持っていない。
なんとなく、自分がアカギの後に仕事を追えるのが気に食わなくて、なんだと応えたものの鷲巣は数歩、歩き出した。
「待て、鷲巣」
「…なんじゃ、わしにはさいごの仕事がある。早く終わらせたいんじゃから…」
がしっ
「ぎゃっ…?!」
ぼたり。
白い袋が地に落ちた。
突然抱え上げられて、鷲巣は大きな目を更におおきくしてアカギを見下ろす。
否、見下ろそうとしたのだけれど
アカギは鷲巣の体を抱えたまま、赤いブーツで地を蹴ると配達先とは逆方向へと走り出す。
「ぁ゛…? え……?!」
白い袋と違って、鷲巣の体は重みがある。だというのにアカギは速度を落とそうともせず、たったったと走る、走る。
「………。ぁ…アカギッ!!! 貴様一体何のつもりじゃ…!!」
速度と揺れに帽子が落ちそうになって、反射で片手で帽子を押さえつける。
アカギの走る足跡が、闇の中なのにくっきりと黒に浮かび上がった。
走るアカギの背後には、ただ深いばかりの闇が広がる。それは動かない筈なのに、黒く、たゆたい、蠢き、揺らめき、月の無い夜の海のように誘うのだ。
アカギは眼球だけ動かす一瞥で背後を確認し、走り続ける。
「アンタを『あそこ』には行かせない」
まだ、まだだ、まだ早い。
鷲巣のさいごの配達先は、まだあそこでなくて良い。
「なにを、言って」
「俺はまだトナカイも上手く操れないし、ソリのスピード上げて荷物を落としそうになるし、…まだアンタに叱られないと駄目だ」
「……ァカ…ギ」
足音も掻き消える闇の中で、アカギは走る。鷲巣は抱えられたまま。
来年も2人、プレゼントを配ることだけは確かで、ただそれだけが大切なこと。
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