ぬるぬると…俳優パラレル。
たったーふらぐがたったよー。
空は紺色に染まりつつある。
浴衣でバイクの後ろに乗るのは難しいので、神社までは車で送って貰うことにする。余談ながら、鷲巣の車はアイボリー色のクラウン。2人、揃って後部座席へ。アカギはといえば、車を買うならやはり大きいものの方が乗りやすいのかと真剣に考えていた。
鷲巣と何処かへ出掛けるときは、大抵こうやって鷲巣の車に乗せて貰うのだけれど、男子の本望としては自分の所持する車にこそ恋人は乗せたいものだ。しかし自分が運転するとなると、どうしても、後部座席と運転席で離れてしまうのがネック。バイクなら後ろに乗せれば密着はしてもらえるが、鷲巣の年齢を考えると、体力的な面で辛いだろう。
どれがベストか…。考えている間に車はアカギの指定した神社の近くで止められた。
「アカギ君」
着いたよ?と促され、アカギは慌てて腰を上げた。ゴカッ。良い音がして、アカギの頭頂部と車の天井が打ち合わされる。
「…~~~」
流石に少し痛かった。座席に座りなおして頭を抱えたアカギを見上げ、鷲巣がくすくすと小さく笑う。
「大丈夫?」
ひんやりした手が、頭をそっと撫でる。バツが悪いけれど、何よりも鷲巣に触れられるのには弱い。抵抗も出来ずに撫でられているアカギに、また、小さな笑いが漏らされた。
「仕事が終わって直ぐに来てくれたんだね? 疲れているなら、無理してはいけないよ」
「疲れてません。大丈夫です」
軽く、鷲巣の手首を握る。
離れていたのは数日だったけれど、何かと不規則に動いていたので電話も出来ず、姿を見れないばかりか声も聞けなかった。(携帯でこっそり撮った動画と写真は毎日見ていた)
だからその分を取り戻したい。一緒に居たい。
そんな意思を込めて握った手首。鷲巣はふうわりと笑うと、握らせたままに車を降りようと促した。
また、連絡したら迎えに来て欲しいと運転手に告げて、車外へと。
「…賑わっているね」
一歩外へと踏み出せば、ぬるい、夏特有の温度の中に夜店の光がいくつも浮かぶ。鷲巣は驚いているようだった。まさか縁日をはじめて見たわけではあるまいが。
「久しぶり、ですか?」
「あの子が幼い頃に行ったきり…かな…」
夜店のヒヨコをとってきて、それはそれは立派に育て上げてしまって大変だったよと、笑う。豪奢だが厳かでもある鷲巣の邸に、早朝から響き渡る鶏の鳴き声を想像したアカギも小さく笑った。
神社への道のり、並ぶ夜店を物珍しそうに、眺める。
綿飴の夜店を気にしていたので、ひとつ買いましょうかというと、随分躊躇った後で頷かれた。
「はい、どうぞ」
ふわふわした菓子を、差し出す。
「ありがとう」
照れながら、受け取る。
人の流れに乗ったままソレを食べるのは鷲巣には難しそうだったので(以前、道で缶コーヒーを飲みながら歩いている男性を見かけた時、感心したように「器用だね」と言っていたのをアカギは覚えていた)、流れから離れ、境内を回る別ルートの小路地に、案内。
「座って食べるところがあれば、良かったんですけど…」
軽く、首を横に振る。
「此処で充分だよ」
薄暗い闇の中、どこから食べるか迷いつつ、ぱくりと。
「ん」
ふわふわの綿飴に、半ば顔を埋めながら食べる様といったら。
写メとって待ち受けにしたいと悶々と考えていたアカギの前に、白いふわふわが差し出された。
「君も、食べて?」
ね? と首を傾げられ、それより貴方を食べたいです、とかベタ過ぎる返しをしそうになった。しかしまあ、外、だし…。等と考えていれば、鷲巣の指は白い綿を摘まみ上げ、千切ったそれをアカギの口元へ持っていく。
「はい」
「…いただきます」
舌が触れれば、薄く引き延ばされた砂糖のかたまりは直ぐに溶ける。独特の甘さを咥内へ収め、綿飴を、千切った鷲巣の指にも舌を這わせた。此方も、甘い。
「ッ…!」
最初は指の腹を舐める。
輪郭に沿って、指を舐め上げ、指の節を軽く吸い、付け根の股を執拗に、舌先が弄る。
「アカギ、く、…っ」
手を、引こうとする鷲巣の細い手首を掴んで逃がさない。
既に
この時点でアカギの理性は半分以上飛んでいる。
手の甲を通った舌は、手首に達し、吸い付きながら歯を立てる。
「~ンッ!」
ぽすん。
綿飴が地面に落下着地した、小さな音がした。
Powered by "Samurai Factory"