前回の俳パロ続き。ぎゃぐぱーと?
次はおそらく兎ぱーと。
脱衣所にて、バスタオルで体を拭いていれば控えめなノックの音がした。
「着替え、借りました。開けても良いですか?」
今更に、何を言うのかねぇこの子はと、微かに笑う。
己のどんな姿も痴態も知っているだろうに、ドア一つ開けるのに伺いをかけるアカギが可愛らしかった。
「大丈夫だよ」
応えれば、少しだけ開かれたドアの隙間から畳んだ衣服が差し出された。脱衣所の中は見ないまま、手渡そうとするアカギに、鷲巣はまだ笑みを浮かべたまま。アカギには、その表情は見えない。
「ありがとう」
「~~っ、いえ、その、…俺のじゃないんで…。あ、でも新品ですよ! さっき袋から出した買い置きですから」
「そう? わざわざ出して貰ったなら悪いことをしたねぇ」
「そっ………」
アカギの、現時点での脳内。
鷲巣さんに、赤木が一旦肌につけたものを着て欲しくない
鷲巣さんに赤木への借りなど作らせたくない
この2つが見事な具合に均衡を保ってグラングラン揺れていた。
脱衣所の中では、鷲巣が口元を押さえて笑いを堪えている。
アカギの考えることなど大概読める。先の発言は、ちょっとした悪戯心からの故意の意地悪。
固まっているアカギの気配がまた、可愛らしいと思ってしまう。その、フリーズしている手から着替えを受け取ると、ぎこちない動作で手が引っ込んだ。
「……じゃあ、ゆっくりで良いですから…気をつけて着替えて下さいね」
明らかに気落ちした声がドアの隙間から。
流石に少し気の毒になったので、フォローすることにした。
「アカギくん」
「はい…?」
「後で、髪を乾かすのを手伝って貰っても良いかな」
「はい!」
喜んでー!と語尾に付きそうな勢いで返答されて、ついに少々の笑い声を漏らしてしまう鷲巣であった。
赤木が用意してくれたのは、Tシャツと生成りの綿のパンツだった。(下着は袋に入ったままの状態で渡された。トランクス。)Tシャツはともかく、パンツは赤木が購入したものであるが故に、丈が合わない。そのままも不恰好なので、裾を何度か巻くように折る。
赤木はあの年代にしてはスタイルも良いし背も高い。ジェネレーションギャップを感じながら着替え終わった鷲巣は、タオルを濡れた頭に巻いたままリビングへ。
「…すいませんね、パジャマってのが無くて」
肘から先を露にする、という服をまず着ない。ガウンも素肌に直接ではなく、肌着をつけた上から羽織るのに、いまは布キレ一枚のみ。床に僅か引き摺る形で折って捲られたズボンの裾。
普段、自邸では夜に寛ぐときはガウンだし、寝るときはパジャマに着替える鷲巣の、いまの出で立ちの違和感といったら。思わず赤木が謝った理由はその辺り。
「君が謝ることでもないよ。むしろ、私がお礼を言うことなんだから」
ありがとう。
伝えれば、赤木は仏頂面で視線を外す。
気恥ずかしいだけだと判っているので、気にせずやんわりと笑んだまま。
今にも威嚇しそうな勢いで両者を眺めていたアカギに、君もシャワーを浴びてきたら?と提案してみる。数秒、迷いながらも頷いたアカギを、複雑そーーーな目で赤木が眺めていた。
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