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いわゆる裏的な
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Posted by 瑞肴 - 2008.11.01,Sat



さすがに荒っぽい感はいなめない、けれども
まあイメージ・・・。



















 

アカギが帰らない。
今日で、2日になる。

 


何かあったのか。気にしようがどうであろうが、現在の鷲巣にアカギを探す術はない。
せめてと、新聞記事で事故事件の記事を舐めるように読み尽くすが、そこにも手掛かりなどはなく。
「………」
手持ち無沙汰で、丸二日を過ごしている。
どうして良いのか判らない。そんな事態がそもそも初めてだ。いつだって、道は自分で切り開いて、突き進んでいった、のに。
昨日、一昨日、ロクに眠ってもいない。それなのに、自分は何も、していない。できていない。
「…っ!!」
拳が床に叩きつけられる。
何度も、何度も。
苛立ちは勿論。
ただ、大半は、
不安。
「……ぐ…」
アカギがもう、戻ってこないのではないかという、不安。
ずっと傍に居るのだと、アンタの居る場所に居たいのだと、伝えられたのを思い出す。
アカギは、嘘など吐かないと、思う心と、それでも、という心。
人の心など、いとも簡単に変わってしまうと、嫌というほど知っている。心の闇ばかり見て、そうしてそれを操ってきた鷲巣だからこそ、知っている。
一人の部屋はひどく冷えて、膝を抱えて小さくなった。
まだ、若い、あの才能の塊のような男が、自分に…飽いたというのなら、それをどう責めて良いかすら判らない。
アカギが戻ってこなかったら、己はどうするのだろうか。
半日何も食べていないが、腹も減らない。このまま、部屋の隅でひっそりと乾いていくのだろうか。それもまた、もう何も持たない己には似合いかもしれないなと、鷲巣はほんの僅かに唇を歪めて笑った。
アカギが居ない。日は落ちて薄暗くなってきたけれど、今晩も、眠れそうになかった。

 

 


ぱかりと目を開くと、視界に飛び込んできたのは天井だった。
しかも、覚えの無い。
「………?」
頭の奥が痛んで、眉を顰める。
記憶が不自然に飛んでいて、じくじくと其処かしこが痛む中、アカギはゆっくりと思考を巡らせた。
引っ掛かったのは、意識が暗闇に落ちる寸前の記憶。確か、バイクと接触して、それから
「…覚えてねえな」
状況から判断するに、事故ったのだろう。で、病院に運ばれたのだろう。自分の記憶は昼過ぎで途絶えているのだけれど、窓の外は夕暮れだった。
「……」
まだ少し眠い。
腕が動かしにくいなと思えば、点滴の管が繋がっていた。
こういうものをくっつけたのは久し振りだと思いながら、なんとなし点滴の袋を見る。そこに、日付が記されていて。
「………」
立ち上がったアカギは、腕から針を引っこ抜く。棚を漁って自分のシャツとズボンを見つけると手早く着替えた。久々に動かす足は多少ふらついたが、それは関係ない。
早く、帰らなければ。

 

 

当然、の如く、数日意識がなく点滴だけうけていた体は中々思うようには動かない。病院で色々と手続きをする時間が惜しかったアカギは受付をナチュラルにスルーして帰途についているのだが、日は容赦なく沈んでいく。
もどかしい。
歩道からはみ出てフラフラと歩くアカギに、背後からけたたましくクラクションが鳴らされた。黒塗りの車。見て判る程度のご職業。
「…クク、丁度良い」
退かないアカギに、運転席の男が窓から顔を出してがなり立てた。薄く笑いながら、近寄ってくる白髪の青年に、男は異様を感じて怯む。
「なぁ、この車貸してくれないか?」

 

 


電気を点けるのに立ち上がるのも億劫で、暗い部屋の隅、座り込んだまま。
冷たくて、寒くて、手足を伸ばす気にもなれない。
玄関で、ガァン、と高い音がした。
「…?」
鍵をかけていなかっただろうか。そんな根本的なことも、思い出せず。ただ、ゆるりと顎を上げて暗い部屋へ視線を浮かせる。
荒い足音が近付いてきた。
アカギではないように思う。アカギがこんなに荒い足音で歩いたところなど、見たことも聞いたこともない。
「鷲巣」
「…………あ゛?」
素っ頓狂な声を上げる。
目の前に現れたのが、アカギだったから。
ぽけ。と。
まさしく鳩が豆鉄砲食らった顔で固まる鷲巣。
何故か、シャツに赤い飛沫を散らせながらそれを見下ろすアカギ。
「……フ」
アカギの失笑。
「…っ?! な、…んじゃ、貴様…ぁッ…!! ……この、…っわしを、笑いにわざわざ…っ」
「……違う」
「何が…っ!!! 失せろ、馬鹿者…っ!! この虚けが…っ!!!」
「違うって」
泣いている自覚もないであろう鷲巣の体を、跪いて抱き締めて、アカギが大きく息を吐き出した。
その体が、数日前より肉が薄くなっていることに気付いて、鷲巣の眉が寄せられる。
「…アカ ギ…?」
「悪い、遅くなった」
「アカ……、……っっ!」
強く抱き締められて、枯れた指が、応えるようアカギの背に食い込んでいく。
「…このわしを、…こんなに、待たせ…っ ……良い度胸…じゃ…っ…!」
「悪かった」
「……っ、ぐ、……っく…ふ」
嗚咽を堪える震えた唇を、舌先で舐める。
そうして絡まる視線のままに、今度はゆっくりと、深く唇を重ねていった。

 

 


数時間後。
事情を説明したアカギが、真っ青になった鷲巣に救急車を呼ばれ、再び病院送りにされたことを追記しておく。
何故それが「数時間後」なのかは、ご想像に任せるとして。

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